JR埼京線の板橋駅で痴漢を疑われた男が線路に飛び出し逃走した事件で、警視庁板橋署は26日、無職の福島覚容疑者(41)を都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した。

 福島容疑者は25日午前9時前、埼京線の車内で20代の女性の尻を触った疑いが持たれている。同容疑者は女性に手をつかまれ、板橋駅でホームに降ろされた際、線路に飛び出し逃走。板橋署が行方を追っていたが、現場にコートを残し、ポケットに入っていた物から身元が判明し、逮捕につながった。容疑を否認しているという。

 都内では3月以降、痴漢行為を疑われた男が線路を逃走する事件が、今回を含め7件も相次いでいる。実際に痴漢行為に及んだ上で逃走した者もいるだろうが、一般的には冤罪で痴漢を疑われた場合「すぐに現場を立ち去ったほうがいい。駅の事務室まで行ったら、警察を呼ばれ、女性の言い分だけで逮捕されてしまう」といわれていることも背景にはありそうだ。法曹関係者は「線路に侵入した場合、鉄道営業法違反など別の罪に問われます」と指摘する。

 2月には、松本伊代(51)と早見優(50)がJR山陰線の線路内に侵入し、書類送検されて話題となった鉄道営業法違反は1万円未満の科料が下される。また、線路に侵入したことでダイヤが乱れてしまった場合は、2年以上の懲役が科せられる往来危険罪に問われるケースも。大幅な遅延が発生した場合は、鉄道会社から損害賠償を請求される可能性もある。

 万が一、痴漢冤罪の当事者となってしまった場合に備え、近年では「痴漢冤罪保険」も注目を集めている。月額590円で携帯電話に登録しておけば、事件発生時に画面のボタンを押すだけで登録弁護士にメールが送信され、電話で相談できるという仕組みで、主に首都圏在住の男性に人気だという。3月には、痴漢に間違えられた場合に取るべき行動を順にナビゲートしてくれるスマートフォン用アプリ「痴漢冤罪防止ナビ」も開発された。どちらも現場で早急に対応できるのが特徴だ。