千葉県我孫子市でベトナム国籍の小3女児、レェ・ティ・ニャット・リンさん(9)が殺害された状態で見つかった事件で14日、同県松戸市のリンさん宅の近くに住む40代の男が千葉県警に死体遺棄容疑で逮捕された。遺留物とDNA型が一致したという。3月24日に行方がわからなくなってから3週間、事件は重大な局面を迎えた。

 3月24日朝、登校のため松戸の自宅を出た後に行方不明になり、26日に我孫子市の排水路脇で無残な姿で見つかったリンさん。母国ベトナムで葬儀が営まれ、今月3日に埋葬された北部フンイエン省の墓地に眠っている。11日には通っていた松戸市立六実第二小学校で入学式が開かれ、「犯人が捕まっていないので不安」との声が児童の親から聞かれた中、捜査に大きな進展があった。

 逮捕された男は、DNA型がリンさんの遺留物に付着していたものと一致したという。遺体発見後、翌日にランドセルが同現場から約20キロ離れた河川敷で見つかり、その翌日の28日には川の約500メートル上流で本人のものとみられる衣類が発見されていた。29日にはさらに上流で筆箱などが見つかっている。

 男が警察で調べを受けていることが分かると、テレビ各局が速報するなど大きなニュースに。警察は逮捕状を請求し、執行の運びとなった。

 リンさんの父、レェ・アイン・ハオさんは、犯人の早期逮捕が実現するよう、自宅近くや遺留品発見場所の周辺住民に情報提供などを呼び掛けていた。母のグエン・ティ・グエンさんは「私たちはリンから不審者の話を聞いたことはない。無理やり連れて行かれたのでない限り、知らない人について行くような子ではない」と語っていたが、逮捕されたのは近くに住む男だった。

 捜査では通学路における不審者の情報も持ち上がっていた。

 通学路一帯は道幅が狭い住宅街で、外部の人の往来は多くない。遺体発見現場は、自宅から約10キロ離れている。リンさんは事件前、同級生に「通学路に不審な知らない大人がいた。怖い」と訴えていたという。

 行方不明になった日の朝、通学路付近を走っていた車のドライブレコーダーの画像に、リンさんとみられる女児に近づく人物が写っていたことも明らかに。1人で歩いていたリンさんに似た子供に後ろから近づき、声をかけるような様子だった。これもあり、犯人に近隣住民の可能性も持ち上がっていた。

 死因は窒息死の可能性が高く、首には絞められたような痕があったリンさん。排水路に架かる橋の下で見つかった遺体は衣服を着けていない状態だった。

「娘が大好きだった日本で、なぜこんなひどい目に遭わなければならないのか」

 共同通信の取材に対し今月初旬、リンさんの両親は無念の思いを語っていた。2人によると、リンさんは2歳の時に来日。当時から父親のハオさんは日本で仕事をしており、「日本で輝かしい生活を送ってほしい」と「ニャット(ベトナム語で日本)・リン(同、輝き)」と命名。子供により良い教育を受けさせたいと、家族で日本に移住した。

 その憧れの国で起きた悲劇。「私はこれまで、日本のことを素晴らしい国だと思っていた。罪のない少女が、なぜこのようなひどい目に…」と母グエンさんは話していたが、事件解決はせめてもの供養となる。