遺留品の発見で犯人像が見えてくるか――。千葉県我孫子市の排水路脇から26日に松戸市六実の小学3年生でベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん(9)が全裸遺体で見つかった事件で28日、遺体の遺棄現場から北西に十数キロ先の茨城県側の利根川河川敷からリンさんのランドセルや行方不明になった当日に着ていた洋服が見つかったことが分かった。専門家が犯人像を分析し、近いうちに犯人がボロを出す可能性を指摘した。

 リンさんは24日午前8時ごろ、小学校の修了式のため自宅を出た。自宅の防犯カメラにはグレーのパーカにピンクのズボン姿で出かけるリンさんの後ろ姿が写っていたがその後、自宅から300メートル以内の地点で、何者かに連れ去られ殺害されたとみられている。

 遺棄現場の排水路脇の草むらには争った形跡がなくリンさんの所持品も見つかっていなかった。犯人は別の場所でリンさんを殺害してから、遺体と洋服やランドセルをわざわざ別々の場所に遺棄したことになる。

 小説「警視庁強行犯捜査官」(さくら舎)などの著書がある元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「ペドフィル(小児性愛者)の犯罪者にとって“戦利品”であるランドセルや衣類は手元に置いておきたいものです。ただ、捜査の手が迫る危機感から、検問で見つかっては一番まずい遺体をまず遺棄し、それから“戦利品”も処分せざるを得ないと考え、捜査かく乱を狙って別の場所を探したのだろう」と状況を読み解く。

 県をまたいで茨城で遺棄したことを踏まえ「犯人の心理からすると、自宅とは逆の方へ向かう。遺棄現場から北西に向かったということは、犯人はリンさんの近所に住んでいる、誘拐未遂など女児にかかわる前科がある30~40代後半くらいの男ではないか」と犯人像をプロファイル。

 捜査の手が及ぶことを恐れ、ランドセルや衣類などの証拠物を手放した犯人だが、ごく小さな所持品や写真などは、そのまま所持している可能性が高いという。

「奈良で女児を誘拐して殺害した小林薫元死刑囚は事件後、飲みに行った先で女性従業員に(女児の)遺体とみられる写真を見せたりしていた。この手の犯罪者の中には、どうしても黙っていられなくて自らボロを出す者もいます」

 遺体発見前とみられる時間帯に「用水路にいるから探せ」といった書き込みが、複数のネット掲示板にあったことも明らかに。これが犯人のものかどうかは不明だが、ランドセルや衣類も発見され、捜査は大きく進展しそうだ。

「ペドフィルは遺体や身に着けているものをなめたりしゃぶったりしているはずなので、発見されたリンさんの服に付着した犯人の皮脂や体液からDNAが検出される可能性も大です」と北芝氏は科学捜査による新たな証拠を期待する。

 犯人の行動をどこかの防犯カメラが捉えている可能性もある。

「リンさんを狙った計画的犯行のため、拉致現場から殺害現場、遺棄現場まで(車を撮影する)Nシステムは避けた道順を通行しただろう。だが、街中の全部の防犯カメラに写らないことはほぼ不可能。捜査員100人態勢で県警も本腰を入れており、早ければ10日くらいで捜査情報が集約され犯人逮捕にこぎ着けるのでは」

 包囲網は狭まっているのか。