朴槿恵(パク・クネ)前韓国大統領(65)の親友・崔順実(チェ・スンシル)被告(60)の国政介入事件が、血なまぐさい展開になってきた。21日、崔被告との共謀による収賄容疑などが持たれている朴氏は初めて検察の事情聴取に応じ、関与を全面否認。聴取は約14時間に及び、ソウル中央地検を出たのは22日朝だった。一方、事件のキーマンの一人で、デンマークに逃亡中の崔被告の娘チョン・ユラ氏(20)の担当弁護士が今月18日に急死していたことが新たに判明。韓国内では「暗殺されたのでは?」と騒然となっている。

 朴氏は21日午前10時前に出頭し、深夜まで調べを受けた。その後も調書の内容を確認するため地検に残り、報道陣の前に姿を見せたのは22日午前6時すぎだった。

 女性大統領から“疑惑の女”に…。朴氏には親友の崔被告と結託し、最大財閥サムスングループから巨額賄賂を受け取った収賄容疑のほか、職権乱用し、崔被告が支配する財団に出資を強要したり、政権に批判的な文化人のブラックリストを作り補助金対象から外すなど、13件の嫌疑がかけられている。

「なかでも検察が躍起になっているのは、朴氏のサムスンからの収賄容疑。世論の後押しもあり、何が何でも立件したい」とは法曹関係者。

 収賄容疑で有罪となれば、最高で無期懲役の実刑となるが、そうなれば朴氏の支持者が黙っていない。

 今月10日に朴氏の弾劾が決まると、一部が暴徒化。

 憲法裁判所のある地下鉄安国駅周辺で機動隊と衝突し、3人の死者が出た。また、抗議と称した割腹自殺未遂と焼身自殺未遂がそれぞれ1件発生したという。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「大統領職を解かれた朴氏ですが、4年ぶりに戻った私邸で彼女を待っていたのは、支持者たちの歓声と太極旗の波でした。それに向かって手を振る朴氏は、さながら凱旋将軍。私邸のレンガ壁はエルサレムの『嘆きの壁』をもじって『号泣の壁』と呼ばれており、支持者が毎日訪れ、弾劾に対して怒りや悲しみの声を上げていきます。壁に赤いバラやカーネーションをささげるのがならわしになりました」と話す。

 続けて「朴氏の支持者は、退役軍人など年配者が大半だと言われていますが、10日の暴動を見ると、その限りでもないようです。もし朴氏が刑事被告人になったら、怒りに任せた支持者が、再び過激な行動に出ないとも限りません」と危惧する。

 そうした不穏情報を察知してか、この日の朴氏の聴取は異例ずくめだった。

 ソウル中央地検に出頭する朴氏の車は、警察の白バイが徹底ガード。聴取は建物10階で行われたが、マスコミ対策で窓のカーテンはすべて閉じられた。
 昼・夕食のための1時間休憩も設けられ、朴氏はサンドイッチやいなりずし、韓国風のり巻きなどを持参。聴取では検事が朴氏を「大統領様」、朴氏は「検事様」と呼び合っていたという。

 集まった報道陣に朴氏は「国民の皆様に申し訳なく思う。誠実に取り調べに臨む」と述べるも、事件への関与は全面否認した。

 一方、海外ではきなくさい出来事も起きていた。現地メディアによると、デンマークに滞在中の崔氏の娘チョン氏を弁護していたデンマーク人のペーター・マーティン・ブリンケンベル氏(46)が18日に謎の死を遂げていたことが分かった。死因はまだ確認されていないという。

 チョン氏は梨花女子大裏口入学と単位不正取得疑惑が浮上すると、留学先のドイツからデンマークに逃亡。1月に不法滞在容疑で現地警察に逮捕され、今月17日に韓国への送還が決定した。

 これに反発した同弁護士は最高裁への控訴やチョン氏の政治亡命をチラつかせていたが、翌18日に遺体で発見された…。

 現時点で同弁護士の死に「不審な点はない」とされているが、韓国のネット上では「チョン氏の送還を遅らせたり、決定を覆そうとしたため消された」という暗殺説や「誠実に対応しないとお前もこうなるぞ!というチョン氏への脅し」という物騒なウワサが広まっている。

 まだまだ事態は波乱含みだ。