シノギが減ったのが山口組の分裂の一因だったが、分裂して「抗争が怖い」との理由から、若者が暴力団員になりたがらないというヤクザにとってはマイナススパイラルになっている。

 全国の暴力団構成員の数は、昨年末現在で約1万8100人となり、統計が残る1958年以降で、初めて2万人を下回ったことが16日、警察庁がまとめた「組織犯罪情勢」でわかった。

 前年より約2000人の減少で、要因を「暴力団対策法による締め付けや、民間で広がる反社会的勢力の排除で、資金確保が厳しくなったため」と分析している。準構成員らは約2万900人。

 90年代前半には全国の暴力団構成員数は10万人を超えていた。暴力団対策法が施行された92年には、山口組だけで約2万2000人いたとされる。昨年の発表では山口組約6000人で、神戸山口組約2800人となっていた。

 元山口組系組織の組長で作家の石原伸司氏は「山口組が分裂する数年前から、暴対法、暴排条例でシノギがどんどんなくなり、山口組の上納金が高く、悲鳴が上がっていた。そこで神戸山口組が割って出て、上納金が低いことで数を増していった。でも分裂を機に、どっちかにつくわけにもいかず、ヤクザをやめたのも多かった」と語る。

 さらに警察庁が両組について“対立抗争状態”と認定。

「命をかけるのが怖いと、若いのがヤクザにならなくなったのもある。若い不良はすぐに逮捕されるヤクザになるより、独立した自営のチンピラやったり、詐欺グループ、ホストで稼ぐ方が手っ取り早いと考えている」と石原氏。

 転職先は他にもある。

「年取ってから刑務所入って、たばこは吸えない、酒も飲めない、女を抱けないのはつらいから、運転手になっている。親分やアニイ(兄貴)を高級車に乗せて、全国を走り回っているから、プロドライバー並みのテクニックを持っているヤクザは多い」(石原氏)

 数が減った暴力団は少人数でもできる覚醒剤を扱うことになるようだ。全国の警察が昨年1年間に、密輸事件で押収した覚醒剤は計1428・4キロに上り、統計を取り始めた2002年以降で最多となった。