金正男氏の遺体は永久に身元不明のまま?

2017年03月08日 07時00分

殺害された金正男氏(ロイター)

 金正男氏(45)の殺害を巡って、マレーシア当局を批判し、国外退去命令を受けていた北朝鮮の姜哲(カン・チョル)駐マレーシア大使が6日、同国を出国した。断固とした措置に出ているマレーシア側は今後、北朝鮮との国交断絶も辞さない構え。大使館にかくまわれている“逃亡犯”や、正男氏の遺体は今後、どうなってしまうのか――。

 姜大使は事件後、マレーシア当局に「韓国政府と結託してのでっち上げ」などと再三、批判を展開していた。

 堪忍袋の緒が切れたマレーシア政府は北朝鮮駐在の自国大使を召還。北朝鮮からのビザなし渡航の中止を決めた上、姜大使の国外退去を通告していた。
 外交関係者は「国際社会で大使を追放処分するのは大変厳しい措置。事実上、開戦前夜の関係といってもいいほどだ。マレーシア政府が北朝鮮と国交断絶へのステップを踏んでいる」と指摘する。目下、マレーシア当局に課せられているのは、3人の容疑者の身柄拘束だ。

 事件では実行犯のドアン・ティ・フオン被告(28)、シティ・アイシャ被告(25)が逮捕、起訴され、現場で指揮した北朝鮮国籍の4人の男は既に国外へ逃亡した。犯行計画を描いたとされる北朝鮮大使館のヒョン・グァンソン2等書記官(44)と高麗航空職員のキム・ウクイル容疑者(37)、そしてアイシャ被告をスカウトしたとされるリ・ジウ容疑者(29)の3人は北朝鮮大使館にかくまわれているとみられ、当局の逮捕状や出頭命令に応じていない。

 拓殖大学客員研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永チョル氏は「事件解明のカギを握る3人ですが、外交官で不逮捕特権や大使館の不可侵権がある。(北朝鮮国営の)高麗航空機が迎えに来て、大使館に保護された3人を北朝鮮へ連れて行く可能性は高い」と指摘する。

 ヒョン2等書記官は外交官だが、他の2人も不逮捕特権が適用されるのか?

「2人とも外交官旅券を持っている可能性は高い。事実上の工作員で、もとから外交官になりすましたりしている。残念ながらマレーシア当局も(不逮捕特権を定めた)ウィーン条約に反し、3人を強硬に逮捕するような手段に出れば、北朝鮮と同じ“ならず者国家”になってしまう。それほど外交官の不逮捕特権は強い。韓国では3人を取り逃がし、未解決事件になる恐れが危惧されています」(高氏)

 中ぶらりんになりそうなのは正男氏の遺体だ。当局は親族のDNAと照合し、正男氏と確定させ、親族に遺体を引き取ってもらいたい意向だ。

「北朝鮮に返すことは、まずないでしょうし、国交断絶となれば100%あり得ない。北朝鮮は独自に司法解剖し、VXガスで殺害された証拠は見当たらなかったと主張するのは明白です。身元確認も中国が保護している(第1夫人と第2夫人の)遺族は暗殺の恐れがあり、マレーシアには来られない。当局側が独自に遺族側と接触し、DNA鑑定を行うかもしれないが、公式には永遠に身元が分からないなんてこともあり得る」(高氏)

 北朝鮮は正男氏殺害で国際世論の非難を浴びる中、6日には日本海へ弾道ミサイル4発を発射するという暴挙に出た。今月から始まった米韓合同軍事演習をけん制する狙いだが、このタイミングで正男氏殺害に関与したヒョン2等書記官らを帰国させるようなことがあれば、マレーシアとの国交断絶は避けられず、国際社会で孤立を深めるのは明白。やりたい放題の金正恩体制に鉄ついが下るのは、もはや時間の問題だ。