ターゲットは“隠し財産”! 暗殺された金正男氏(45)の金の流れに注目が集まっている。正男氏はここ数年金銭的に困窮し金正恩朝鮮労働党委員長に手紙で“仕送り”を無心することもあったというが、実はそれは弱者を装うためのブラフだった可能性が高い。北朝鮮情報筋によると、正男氏には、父親の故金正日総書記から引き継いだ300億円にのぼる財産があるそうで、相次ぐ側近らの亡命や資金不足などで足元がグラつく正恩氏がこれを強奪しようと狙っているというのだ。

 いまだ多くの謎が残る正男氏の暗殺事件。なぜこのタイミングで殺す必要があったのか?

 一部では正男氏が脱北者を集めた亡命政府の要職に就くという情報が、正恩氏の耳に伝わったためとも言われているが、それも定かではない。

 事実、欧州を拠点とする脱北者支援団体と正男氏との間でやりとりはあったものの、亡命政府構想について正男氏は「興味がない」と返答している。

 それどころか、正男氏は自分に対する暗殺指令を取り下げてもらうべく正恩氏に「自分は権力には関心がない」「どうかそっとしておいてほしい」という趣旨の手紙を何度も送っていた。

 生活の困窮ぶりもアピール。正男氏の後ろ盾となっていた張成沢元国防副委員長が2013年12月に粛清されて以降、正男氏に流れる資金がストップ。最近送った手紙のなかでは「生活が苦しいので、援助してもらえないか」と正恩氏に懇願していた。

 権力志向もなく、金銭的にもカツカツ。正恩氏にしてみれば、殺す価値もないように映るが…。

 金ファミリーを知る関係者は「正男氏には、父親の正日総書記から引き継いだ100億円以上の遺産があった。彼はそれを元手に金を増やした。正男氏は内縁の妻や2人の子供と暮らしていたマカオで、表向きは投資ファンドや外貨資金を運用し、裏では北朝鮮製の覚醒剤密輸や武器売買を手がけていたという。さらに港湾関係の利権も握っていたといい、その額は300億円以上に膨れ上がっていると言われる」と明かす。

 核開発を進める北朝鮮への経済制裁で、同国関連の金融口座が凍結された時期もあったが、関係者によれば「その時も正男氏は、特段困った様子ではなかった。聞けば第三国の秘密口座に財産の大部分を移していたそうだ。別の某国では、正男氏の金を摘発した話が出ている」という。

 事実、正男氏と旧知でマレーシア韓国人会の前会長は一部メディアの取材に、正男氏と最後に会ったのは昨年8月で、計50回以上の食事の会計はすべて正男氏持ちだったことを明かしている。

「日本にもたびたびお忍びでやって来ては、高級クラブやソープで豪遊。3人の泡姫をはべらすこともあった。あっちの方のテクはショボかったらしいけど(笑い)。アレのサイズもテポドン級とはいかなかったそうだ」(風俗ライター)

 これらが事実ならば、正恩氏への金欠アピールは命を狙われないためのブラフだった可能性もある。

 一部報道では、昨年末に朝鮮労働党関係者が正男氏に接触。「忠誠金」と呼ばれる上納金を出すように求めたが、正男氏は応じるとも応じないとも言わなかったという。
「正男氏は北の偵察部隊に常に監視されていて、動向は逐一、正恩氏に報告される。そのなかで正男氏の金欠アピールがブラフだったことや、巨額資金の存在を突き止めたのではないか。たんまりためこんでいるのに、正恩氏に仕送りを切望したり、上納金の支払いを渋ったことに、正恩氏が激怒し、粛清を命じた可能性もある」(北朝鮮情報筋)

 国家財政の厳しい北朝鮮がそう指示したのかもしれない。

 朝鮮情勢に詳しい関係者は「国際社会は正恩氏が“兄殺しの主犯”だとして厳しい目を向け、友好国のマレーシアさえいずれ国交断交となる。他の友好国からも資産凍結の措置が取られることが予想される。そうなると政権維持できない。それでも暗殺を遂行したのは、正男氏の“隠し財産”のありかを把握したからかもしれない」と指摘している。