金正男氏(45)を白昼の国際空港で毒殺したとみられる北朝鮮の“美女暗殺部隊”の恐るべき実態が明らかになった。韓国の複数のメディアは14日、韓国政府関係者の話として、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、正男氏が13日午前、マレーシアの首都クアラルンプールの空港で工作員に毒殺されたもようだと報じた。工作員は2人の女性で犯行後、タクシーに乗って逃走したという。一体、女工作員はどんな組織に属し、殺しのテクニックを磨いていたのか――。

 韓国メディアの報道によると、正男氏は13日午前9時ごろ、クアラルンプールの空港で2人組の女に毒針で刺されて死亡したという。マレーシアや欧米メディアでは「毒液をぶっかけられた」「毒を塗った布で顔を拭かれた」とも。気をそらした隙に毒針を刺したという説も出ている。

 正男氏は、2年前から正恩氏に命を狙われていたようだ。

「正男氏は、そもそも弟の正恩氏が故金正日氏の後継者となることに『3代世襲は世界の笑いものになる』と猛反対。それ以降、正恩氏から暗殺指令を受けた北朝鮮工作員の影におびえ、マカオ、マレーシア、シンガポール、中国などを転々としていた。2年前、正恩氏が工作員に正男氏の暗殺指令を出した。彼は不安な日々を過ごしていたのではないか」と指摘するのは北朝鮮事情通だ。

 これまで何とか逃げ回って生き延びていたが、とうとう毒牙にかけられてしまったわけだ。それにしても気になるのは、正男氏を暗殺した2人の女工作員の正体だが…。

 北朝鮮といえば、美女ばかり揃えた「喜び組」や、五輪などで自国の選手を応援する「美女軍団」が有名だが、闇の存在として「美女暗殺部隊」も存在する。メンバーは100人ほどいて、こちらも美女揃いだ。

“将軍様”の指令を遂行するため、毒針を使ったり、猛毒ガスのスプレーを使用したり、さまざまな暗殺方法を駆使するための特殊な訓練を受けているといわれる。そんな美女工作員たちが世界各地に散らばっている。

 北朝鮮の闇事情に精通する男性は「金正男が殺されたのは、北朝鮮の機密情報を日本など複数の国に流していたため。金正恩政権が発足した2012年から『場所、手段を選ばず、正男氏を除去せよ』との指令が出されており、今回ついに実行された」と断言する。

 韓国メディアによると、殺害に使われたのは、拳銃でもナイフでもなく毒針。11年に元暗殺部隊の脱北者がボールペン型の毒針を韓国メディアに公開し、毒針こそが確実な暗殺方法だと明かしたことがあった。前出の男性も「毒針こそ最強の暗殺兵器。針先に塗ったのは、おそらくトリカブトの毒だろう」と説明する。

 日本でも1986年5月にトリカブト毒(アコニチン)を用いた殺人事件が起きたが、この毒を使った殺害方法は足がつきづらい。

「トリカブトが体内に入ると、意識がもうろうとなり、次第に脈が下がり、最後は死に至る。死因は心室細動などによる心不全になることが多いから、毒殺とはなかなか気づかれない。すれ違いざまにチクッとひと刺ししたら、1時間後くらいには死んでるね。刺されたほうは全く気づかない」(同男性)

 毒針は中国で作られ、闇市場を経由して北朝鮮に売られた可能性が高いという。

 別の事情通は「こういう毒物を作らせたら中国の右に出る国はない。今回の毒針も簡単に作れる代物ではなく、闇市場では高値がつく」という“高級品”だけに、実行部隊に失敗は許されない。

「クアラルンプールの空港で暗殺を実行したのは2人組の女だというが、関わったのは彼女たちだけとは限らない。正男は女好きで有名。彼の情報を集めるために近づいた美女工作員もいただろう」と事情通は見ている。

 一方で、中国の極秘文書には“ポスト正恩氏”について正男氏の名前が記されていたという。中国の意に反して正恩氏はミサイルを発射し、幹部の粛清を続けた。もはや中国にとっても、正恩氏は“操縦不可能”な危険人物とみられていた。

「中国政府が“正恩氏Xデー”を念頭に置いて、正男氏を保護下に置いていたようです。中国が正恩政権打倒の秘密工作を行おうとしていた可能性もある。ここ1~2年、北朝鮮のエリートたちが続々と脱北し、韓国に亡命していたのは、中国と正男氏が裏で糸を引いているとの見方もあった」(事情通)

 何らかの事情で中国が正男氏の保護を緩めたことで、暗殺が実行されてしまったのだろうか。