【アパホテル書籍問題】中国国内は意外にクールな反応

2017年01月26日 09時00分

日本人からは万単位の激励が届いているというアパホテル(ロイター)

 日本の「アパホテル」の客室に南京大虐殺を否定する本が置かれているとして、中国国内で反発が起きている問題で、国家観光局の張利忠報道官は24日、中国メディアを通じ、日本を訪れる観光客はアパホテルを利用しないよう呼び掛けた。国内の旅行代理店や旅行サイトに対し、アパホテルとの提携を停止するよう求めたことを明らかにした。

 アパホテル側は同日、本を撤去しない方針に変更はないとのコメントを発表した。

 中国では、メディアが一斉に同ホテルを非難しているが、ネット上で一般人の声を見渡すと、国中で抗議デモが始まるようなヒートアップはまずうかがえない。

 中国事情に詳しいノンフィクションライターのせりしゅんや氏は「改めて本土に住む中国人たちと話してみると、彼らの気持ちは今月28日から始まる旧正月(春節)に向けられており、このモードを切り替えるほどの関心にはなっていないようです」と語る。

 また、南京事件は「日本政府が国民に伝えない歴史」とも思われていたようで、こうした異論があったこと自体に驚く中国人も少なくない。

 そんな中で、彼らが「中国政府がやりかねない調整」とも感じるのが、犠牲者数の膨張だ。

「国際的には旧日本陸軍が民間人を含む数万人を殺したと報告された南京事件。これを中国政府は20万人と発表し、さらに30万人に修正された。理由には日本の原爆犠牲者が25万人と聞いて『それ以下では都合が悪かった』という説もあるが、中国で数が大きく膨らむのは、三国志などの古代史以前からの伝統です」(せり氏)

 これに上海在住の中国人男性は言う。

「実際がどうかまで判断しかねますが、庶民が日常的に行う価格交渉に通ずるものを感じなくもない。これを通じて中国人も、多少は真相を気にすることになるかもしれませんが、昔の靖国参拝問題に比べたらクールな関心でしょう。現代中国人の多くが気にしているのは、国益や伝統より、自分自身の商売ですから」

 確かに歴史問題でも、国民がヒステリックになるのは近年ではもっぱら日本側かもしれない。アパホテルには、日本人から万単位で激励が届いているそうだ。