留学先のフランス東部ブザンソンで、先月4日から行方が分からなくなっている筑波大生黒崎愛海(なるみ)さん(21)の失踪事件で、同国検察当局は4日までに黒崎さんの元交際相手のチリ人男を殺人容疑で、国際手配した。男はネット上に犯行予告ともとれる動画を投稿。あまりに異常なストーカーぶりが浮かび上がってきた。

 チリ人男は帰国し、この男とみられる人物が昨年末に首都サンティアゴにある自宅マンションから、ピックアップトラックの荷台に隠れて出て行くのを住民が目撃していたことが3日、分かった。住民が証言した。

 チリのマンション住民によると、車を運転していたのは男の父親とみられる。昨年12月30日、マンション駐車場で男がピックアップトラックの荷台に乗り込み、その上にシートがかけられ走り去った。

 マンションは高層で、街路樹や芝生が整備された同市内の高級住宅地に立つ。別の住民宅で高齢者の世話をしているという女性は、男の国際手配を知らなかったとした上で「びっくりした。早く容疑者を捕まえないと」と話した。

 黒崎さんの遺体は見つかっていないが、フランス当局は大学寮に残った血痕やその他の状況から殺人事件と断定。また寮の同じ階に住む学生は、12月5日午前3時過ぎに数分にわたって、絶叫する女性の声を聞いたという。

 国際手配された容疑者の名前は発表されていないが、チリ大学で講師を務める25歳の男。2014~15年、筑波大に留学し、黒崎さんとサークル活動を通じ、知り合ったとみられる。

 その後、2人は交際に発展し、男は黒崎さんと旅行した動画をネット上で公開。男は母国語のスペイン語だけでなく、英語、フランス語、日本語が話せるマルチリンガルで「愛海は私に誕生日贈り物を送った」「ラブストーリー」など複数の日本語タイトルで、男が黒崎さんに「僕だけにキスして」とねだるシーンが何度も出てくる。

 ところが、昨年9月に投稿された「STATEMENT」(声明)では状況が一変。男は「愛海は悪いことをした」「仏滞在中に2週間、条件を守れば、チャラにする。自分のしたことに代償を払う必要がある」と黒崎さんに、なんらかの条件を履行するよう迫る内容だった。

 この条件が何を指すかは不明だが、男は黒崎さんに「ほかの男と会わないようにしないといけない」などと触れ、2人の間になんらかのトラブルがあったことをニオわせている。

 この“2週間”の期限後も男は「My love Naruchan」(愛しいナルちゃん)なるタイトルの動画を投稿するなど、黒崎さんに執着。2か月後に黒崎さんの元を訪ね、凶行に及んだことになる。当局は計画的犯行とみている。

 フランスとチリの間には犯罪人引き渡し条約が締結されておらず、いまだ逮捕もされてない。逮捕後にフランスに身柄が移されるかも不透明な状況だ。