親友の崔順実(チェ・スンシル=60)被告による国政介入事件で“死に体”の朴槿恵大統領(64)が6日、来年4月に退陣する意向を表明した。一方で9日の弾劾案採決が可決された場合は、憲法裁判所に判断を委ねることを明言した。憲法裁判所の判断が出るまでには100日以上かかるとされ、即刻辞任を求める国民の猛反発は必至。拡大を続けるデモ隊の一部が暴発し、朴氏が執務する青瓦台(大統領府)に“怒りの特攻”をかます危険性も出てきた――。

 朴氏がついに来年4月の退陣を明言した。これで国民も納得するかと思いきや、事態はさらに悪化しているという。朴氏が退陣宣言の後に「弾劾案が可決されれば、憲法裁判所の(審理)過程を見守り、淡々と臨む覚悟だ」と付け加えたことが問題のようだ。

 野党側が提出した弾劾案は9日にも採決が行われ、可決される公算が大きい。そうなれば、朴氏は職務停止となり、その後、憲法裁判所の判断を待つことになる。結論が出るまでには100日以上かかるとされ、関係者によれば「来年2月、遅くとも3月までには判断が出る」という。

 つまり前出の朴氏の言葉は、裏を返せば「弾劾案が可決されて職務停止となっても、憲法裁判所の判断が出るまでは辞めない」ということだ。

 もっと言えば、朴氏が退陣時期を4月にセットしたのは、憲法裁判所の審理期間を踏まえてのこと。別の関係者いわく「仮に来年3月に憲法裁判所が朴氏をシロと判断すれば、すべてが覆るわけで、4月退陣は引っ込めるだろう」。こんな“算段”を国民が黙って見過ごすはずはない。

「コリア・レポート」の辺真一編集長は「朴政権に対するデモは最初は『弾劾しろ!』だったが、朴氏の巧妙な時間稼ぎを見抜き、いまでは『即刻辞任しろ!』になっている」と述べる。

 崔被告をめぐる一連の国政介入疑惑が発覚した10月下旬から始まったソウルでのデモは日を追うごとに拡大し、直近の今月3日には主催者発表で過去最高の160万人(警察発表は約32万人)が集結したとされる。

 当初は朴氏のいるソウルの青瓦台を取り囲むように行進していたデモだが、最近は青瓦台からわずか100メートルの距離にまで接近している。「おそらく次のデモは弾劾案が可決される9日だろう。その時の流れで一部のデモ隊が暴徒化し、青瓦台に突入する危険もはらんでいる」(辺氏)

 デモ隊が一気に青瓦台の制圧を狙う可能性もあるとの指摘だ。「そうなれば警察の手には負えないから、軍隊が出動する。大統領権限で戒厳令も出されるだろう」と辺氏は予測している。それほど国民の怒りは沸点に近づいているというのだ。

 この日、韓国国会は国政介入疑惑に関連して、財閥トップ9人らへの聴聞会を開いた。召喚されたのはサムスングループを始め、LGグループや現代自動車、ロッテグループなど、いずれも韓国経済を支える大企業ばかり。

 韓国検察によれば、朴氏は崔被告が介入した文化体育事業などへの資金援助を各財閥に要請。各社が崔氏の財団に寄付したのは、朴政権から本業での優遇やトップの恩赦といった見返りを期待したためと疑われている。

 だが、サムスンの李在鎔副会長もロッテの辛東彬(重光昭夫)会長も疑惑を否定。辺氏は「テレビを見た人は『財閥はうそをついている』『やっぱり朴大統領は信用ならない』と不満を増幅させたでしょう」。

 そうした国民の怒りが暴発し、内戦さながらの事態に発展しなければいいが…。