【コロンビア・一橋大生殺害】元“世界最悪の街”で起きた悲劇の背景

2016年11月23日 07時00分

 南米コロンビア第2の都市メデジンで19日、旅行中だった一橋大学社会学部4年井崎亮さん(22)が、未成年とみられる2人組に襲われ、銃撃を受けて死亡する事件が発生した。井崎さんは今年2月から世界一周旅行に出掛けており、終盤に差し掛かっていたところでの悲劇だった。旅慣れていた井崎さんが、なぜ事件に巻き込まれてしまったのか――。

 井崎さんは来年3月まで大学を休学中で、今年2月にフィリピン・セブ島を皮切りに世界一周の旅を始めた。アジア、中東、アフリカなどを経て、19日午前にメデジンに到着していた。

 井崎さんが旅の記録でつけていたブログによれば、時に空港泊やテント泊もしながら、以前の旅先で出会った人を頼って現地を案内してもらったり、予算の都合で目的地を変更するなど若者らしい旅だった。

 地元メディアによれば、井崎さんは午後4時ごろ、ホテルからパン屋を探しに街中を歩いていたところ、2人組に襲われ、銃で脅され、携帯電話とスマホ、現金を奪われた。すると逃げた犯人を追いかけ、1人を捕まえたが、もう1人に銃で2発撃たれたという。

 メデジンは十数年前まで“世界最悪の街”ともいわれる治安状況で悪名をはせた。本紙に「もっとも陽気な南米地獄放浪記」を寄稿しているジャーナリストの中村竜太郎氏は「巨大な麻薬組織があったところで、スラム率が高い。6年前にサントス大統領が就任してから治安は良くなったというが、それでも誘拐、強盗は当たり前。現地駐在の邦人も夕方以降は外出しないようにし、休暇の時はアメリカに出掛ける。それほど心の平穏を保つのが大変でストレスがかかる場所といいます」と話す。

 地元メディアによると1991年に人口10万人当たりで266件だった殺人件数は昨年、20件まで激減したというが、それでも今年はメキシコ、デンマーク、イスラエルの外国人が殺害されていた。

 井崎さんは、渡航先の危険情報はネット等で事前に把握していたとみられる。エジプト・ダハブでは「シナイ半島のほとんどが外務省ホームページではレベル3とされています」とし、ケニアでは「僕がナイロビに行く1週間前に外国人が殺されたみたいだし、同じ宿の人が銃声を聞いたって言ってました…」とつづっていた。

 外務省のHPで、メデジンは4段階で最も低い危険レベル1ながらも「あらゆる階層の人たちが集まっており、犯罪グループの抗争に巻き込まれたり、睡眠薬強盗やスリ等の窃盗被害に遭ったりする危険性が高い」と注意を呼びかけていた。

 井崎さんはブログに多くの写真を掲載し、「なんでモールがあるとすぐ写真を撮っちゃうんだろう? この癖をなんとかしたい」と街中を散策しながら、スマホで撮影していた可能性もある。

「コロンビアの危険なエリアでは、夕方以降は出歩くべきではありません。現地の人から見れば、バックパッカーでもアジア人は、旅行者でカネを持っていると認識されている。中でもスマホやカメラは外では、絶対に見えるところに出してはいけない。私もバスに乗っていて、ストリートチルドレンがジャンプして、外から窓越しにスマホを奪われそうになったことがある。アイフォーンなら数万円で取引され、現地の物価水準なら給料1か月分以上の価値がある」(中村氏)

 襲われた不運に加え、井崎さんは果敢にも強盗犯を追いかけ、携帯電話などを取り返そうとしてしまった。中村氏は「追いかけたら絶対にやられます。拳銃はもちろんナイフを普通に持っている。警察に駆け込んでもスペイン語が完璧に話せない限り、取り合ってもらえない。強盗犯たちは被害者が泣き寝入りするのがわかっているから、やりたい放題なんです」と指摘した。