【宇都宮・自爆死】“暴走高齢者”急増の恐怖

2016年10月26日 06時45分

 自爆死事件で浮かび上がった“暴走高齢者”急増の恐怖――。宇都宮市中心部で23日に起きた連続爆破事件で死亡した栗原敏勝容疑者(72)の秘めたる狂気が明らかになった。一見すると、温厚そうな普通のおじいちゃんに見えるが、妻や娘に暴力(DV)をふるったり、ネットに「秋葉原無差別殺傷事件のような事件を起こしたい」と書きこんでみたり…。今回の事件も入念な計画性がうかがえる。昨年6月には新幹線の車内で71歳の男が一般女性を巻き込み焼身自殺。はた迷惑で危険な暴走老人が急増しているという。

 元自衛官の栗原容疑者は、宇都宮城址公園で起きた爆発事件でバラバラの焼死体で発見された。遺体は腹部を中心に肉塊となって吹き飛んでいることから、腰の辺りに起爆装置を仕込んでいたと思われる。死因は胸腹部挫滅。爆発で通行人など3人が重軽傷を負った。

 この事件の何が恐ろしいかというと、テロリストでも活動家でもない、一介の“おじいちゃん”が実行犯ということだ。

 ニュースなどではラジオ体操にいそしむ栗原容疑者の映像が流され、それを見る限り、とても自爆死をした人とは思えない。近隣住民からも「温厚な人」「真面目な人」という声が相次いでいた。

 だが、その後の取材で栗原容疑者がブログやツイッターで家庭トラブルや、それに対する司法判断に強烈な不満を持っていたことが判明。同容疑者の主張によれば、自衛官退官後に娘が精神疾患者となり、自分は適切な措置をしたにもかかわらず妻から「お前のせいだ」とののしられ、離婚裁判を起こされたという。

 一方、法廷では栗原容疑者が何かの拍子で攻撃的になり、妻や娘に日常的にDVを働いていたことが暴露された。これが決め手となり、同容疑者は事実上の敗訴。老後の資金1500万円などを没収されたという。

 自暴自棄になった栗原容疑者は、今月9日のブログで「ネット炎上を期待しているのですが、訪問者さえ少なく、色々と工夫しております。大げさにしなければ成りません」と“犯行予告”。

 今年3月にはフェイスブック上で「秋葉原無差別殺傷事件のような事件を起こしたい」と書き込み、妹から「罪のない人を道連れにするようなことは先祖が許さない」と忠告されたが「先祖に許しを願った」と返していたことも分かった。秋葉原の事件で7人が死亡、10人が重軽傷を負ったのは周知の通りだ。

 今回使用された爆弾の残骸からは電線や乾電池、ビー玉などが発見されており、殺傷能力の高い爆発物を自作した可能性は高い。

「栗原容疑者は子供のころから電子機器が好きで、自ら無線機を作るほどの腕前。加えてあの年でSNSに精通している。ネット上で爆弾のレシピを調べて、それを実践することなど造作もないだろう」とは捜査関係者。

 公園での爆発前には、付近のパーキングで容疑者のマイカーが炎上。ここでも破壊力の大きい自作の爆弾が使用されたと見られる。目撃者によれば「1度バーンという音が鳴り、そのあと2度目の爆発があった。2回目で車は一気に炎に包まれた」という。

 栗原容疑者の自宅も全焼しており、焼け跡からは複数の家庭用打ち上げ花火が見つかっている。

 ネット上では人気ゲーム「ドラゴンクエスト」で己の命と引き換えに大爆発を起こし、敵をせん滅する呪文「メガンテ」をなぞり、栗原容疑者のことを「宇都宮のメガンテじじい」と呼ぶ声もあるが、身勝手すぎる犯行は決して許されない。

 同世代で言えば、昨年6月に神奈川県を走行中の東海道新幹線の客室で当時71歳の男性がライターでガソリンに火をつけ、焼身自殺。乗客の女性が巻き添えとなって亡くなった。男性は低年金で暮らしていけず、絶望の果てに凶行に及んだとされる。70代とはいえ、元気な肉体を持ちながら心に絶望や闇を抱えて…こんな危ない高齢者が今後、増え続けそうな雲行きだ。

「団塊の世代前後の人が退職後、生活の変化に付いていけず、自暴自棄になることは多い。体力はあり余っているので、今後も“しでかす”人は出てくるだろう」と前出の捜査関係者も警戒している。危険な暴走老人の出現は、新たな“高齢者問題”なのかもしれない。