【静岡ストーカー殺人】悲劇を呼んだ「同棲アパート出戻り」

2016年10月06日 06時45分

杉山さんが逃げ込んだコンビニ

 被害者の生死を分けた選択とは――。静岡・牧之原市のコンビニ店で4日午前1時半ごろ、バス運転手の杉山沙織さん(32)が、元恋人の40代男性Xにメッタ刺しにされ、殺害された。別れ話のもつれとみられる。Xは3本の刃物を持ち、杉山さんの自宅アパート前で待ち伏せするなど、入念な殺害計画を立てていた。なぜストーカー殺人は起きたのか? 追跡すると…。

「店のカウンターは血の海でした」

 そう証言するのは事件のあったコンビニ店の関係者だ。事件直前に現場となったコンビニに、杉山さんが「家の前に元カレがいる。怖い。警察を呼んでください」と駆け込んだ。

 事情を聴いた店員は杉山さんをカウンター脇にかくまい110番通報。しかし、Xは杉山さんを追ってカウンターに侵入し、所持していた3本の包丁で彼女をメッタ刺しにした。

 杉山さんは首などを刺され、約1時間15分後に搬送先の病院で死亡。メッタ刺しにしたXはその後、自ら首や腹を切りつけ病院に運ばれたが、命に別条はない。当局はXの回復を待って事情を聴く方針だ。

 杉山さんは今年3月、元交際相手Xとの別れ話をめぐり牧之原署に相談していた。同署によると、2人は昨年6月ごろ、静岡市清水区のアパートで一緒に暮らし始めたとみられる。その後に別れ、杉山さんは同11月に牧之原市内のアパートに転居。しかし、再びそこでXと同棲するようになったという。

 それでもうまくはいかず、今年の3月24日に杉山さんが「同棲相手に出て行ってほしいけど『家財道具は俺のだ』と言って聞いてくれない」と同署に相談。同署は2人を呼んで指導したほか、Xの両親や女性の職場に協力を依頼し、同30日には2人が署を訪れ、「別れることになった。家財道具は弁護士を交えて話し合う」と告げたという。

 事実、2人は別れ、杉山さんは4月にいったん、別の場所に転居している。ところが、転居後わずか1か月余りで、居心地の良さにひかれ、Xと同棲していたアパートに再び住み始めたという。

「同じ場所に住み始めたということは、犯人も住所を把握している。ストーカー被害を訴えている人なら、絶対やってはいけないことだった。再び“同棲アパート”に戻らなければ、今回の悲劇は起こらなかっただろう」とは捜査関係者。

 杉山さんは高校時代はソフトボール部でファーストを守っていた。高校時代の同級生(32)は「我が道を行くタイプ。ソフト部時代には、彼女の捕球動作について部員がダメ出ししたこともあったが、彼女は『私はこっちの方がやりやすい』と言い返す子だった。芯の強い子だった」。

 一方で、部員には「高校を卒業したら派手なことをしたい」とこぼすこともあったという。その言葉通り、杉山さんは高校卒業後、バイクに目覚め、中型免許を取得。ツーリングクラブに所属するようになった。
「そこで出会ったのがXと聞いています。2012年11月に友人の結婚式で会った時は『彼氏はいる』『いずれ結婚するかも』と話していたんだけど…」(同)
 だが、Xの束縛がすさまじく、ここ数年は別れ話を繰り返していたという。杉山さんと同僚の男性は「ストーカーで悩んでいると言っていた。警察やオートバイ仲間、弁護士らを交えて話し合ったと言っていた」と話す。杉山さんは年齢がひと回り違う相手について、周囲に「オッサンと付き合っている」と話していたという。2人はバイクや車の話で意気投合したが「彼自身はもっぱら車で、バイクは持っていない」とも語っていたという。

 Xの身勝手すぎる蛮行は許されるべきではない。