【横浜点滴連続殺人】“お看取り病院”の看板を利用か

2016年09月28日 17時30分

高橋院長は内部犯行の可能性を否定しなかった

“お看取り病院”の評判が利用された――。横浜市神奈川区の大口病院で点滴に界面活性剤を混入されたことで、2人の入院患者が中毒死した殺人事件で27日、高橋洋一院長は内部犯行の可能性について改めて「否定できない」と語った。7~9月の間に約50人が同病院で亡くなっていたことも認めた。もともと「お看取りの病院」(病院関係者)だけに死者が多く、犯人はそんな病院の特性を熟知して利用した可能性が高い。

 大口病院に入院していた八巻信雄さん(88)と西川惣蔵さん(88)が点滴に消毒液を混入され、殺害されたのはほぼ間違いないとみられている。27日、高橋院長と担当医らは西川さんの遺族に面会を求めたが、遺族代理人から断られた。

 神奈川県警の調べでは、未使用の点滴袋約50袋のうち、一部の点滴袋のゴム栓に貼られた保護シールに微小な穴が開いていたことが判明。栓の中央部ではなく縁付近に注射針を刺し、痕跡を目立たないようにして界面活性剤などを注入していたとみて、中身の鑑定を進めている。

 これで分かったのは、被害者2人をあえて狙ったのではなく、点滴が必要な大口病院の入院患者なら誰でもよかった無差別殺人の可能性が濃厚になった。
 なぜ犯人は同病院でこんな犯行に及んだのか。

 大口病院では7月から9月に約50人が亡くなっていた。高橋院長は院内感染を疑ったがその形跡はなし。

「医療法が改正されてから、国が家に帰れる患者は帰す方針になった。それで帰れない重篤な方がこちらに送られてくるようになった。正しいか分からないが、これが関係しているのかなと…」(高橋院長)

 病院幹部は「(死者が)多いと思ったが、病院の性格上“お看取り”でおいでいただく患者さんが多い。亡くなる方が1日に何人も重なることは珍しくない」と話し、院長と同様に殺人を疑うことはなかった。

 地元住民も同じ感覚だった。

 ある男性住民は「大口病院は廃れていたイメージを持っていたけれど、最近は盛り返していたんだ。“回転”がよかったんだよ」と話した。

 終末医療を担う病院で回転がいいとは不謹慎にも聞こえるが、それだけ亡くなる患者が多かったということ。外部からみると“はやっている”印象になっていた。まさか事件という発想は浮かびようもなかった。

 大口病院では、亡くなる患者が多いのは普通のことと受け止められていたのだ。犯人は大口病院のこうした終末医療の特性を熟知していた人物だった可能性が高い。

 八巻さんの点滴に異変が見つかったから発覚したものの、西川さんは当初、病死と判断されていた。連続殺人事件が、事件性のない死にカムフラージュされていたわけだ。

 27日、病院のスタッフ全員が集まった。

「連絡がつかない人や様子の変わった人はいたか?」との問いに、高橋院長は「いません」と即答していた。

 近所の住民は「5年くらい前に入院したことがあるけど、今だったら殺されているな」と不信感を募らせている。一刻も早い犯人逮捕が必要だ。