横溝正史の小説「八つ墓村」のモデルになった“30人殺し”の津山事件を思い起こさせる相模原の大量殺人は、なぜ起こったのか? かつての職場で19人もの障害者を次々と刺殺し、逮捕の際には「障害者などいなくなってしまえ」などと話した植松聖容疑者(26)。本人のものと思われるツイッター投稿には、ナチス・ドイツのヒトラー同様の「選民思想」まがいの書き込みがあった。

 植松容疑者は26日午前2時ごろ、かつての職場だった相模湖にほど近い相模原市内の障害者施設「津久井やまゆり園」を襲撃。職員を結束バンドで拘束した上で、障害者だけを狙って凶行に及んだ。

 犯行後、植松容疑者は現場から逃走後に近くの津久井警察署に出頭。その後、2月14日と15日に衆議院議長公邸を訪れ、大島理森議長宛ての手紙を職員に手渡していたことが分かった。

 長文の手紙には「障害者総勢470名を抹殺できます」と記され、重度障害者が日常生活や社会生活を満足に送れない場合は「保護者の同意を得て安楽死できる世界」にしたいと持論を展開。障害者の人権を無視した選民思想というべき内容だった。

 その4日後の2月18日には施設側に「重度障害者」を殺すと発言。翌19日に施設側が考えを改めるよう説得したが、同容疑者はそれを突っぱねて自主退職した。植松容疑者のものとみられる同日のツイッターには「会社は自主退職、このまま逮捕されるかも…」と記されている。

 施設側は津久井署にも相談しており、その際に植松容疑者は医師から「そう病」との診断を受けて措置入院。22日の再検査では大麻の陽性反応も出ていた。

 関係者は「ツイッターの『逮捕されるかも』というのは衆議院議長や施設に“殺害予告”をしたことを指していたようだが、逮捕されなかった。それで格闘技の試合を観戦したり、関西方面に旅行したりのびのびと生活していたようだ。ツイッターの書き込みが減る中、7月22日にドイツのミュンヘンで銃乱射事件があり、容疑者はかなり関心を持ったようで、ツイッターで取り上げていた」と指摘する。

 一体、何が植松容疑者を残忍な犯行へと駆り立てたのか? その動機の一端と思われるものが、ツイッターからうかがえる。

「世界が平和になりますように。 beautiful Japan!!!!!!」

 障害者への一方的な殺意を持っていた植松容疑者が、まるで自らの犯行を美化しているようにも受け取れる。

 また、7月に入ってからは、「じいさん、ばあさんしかいません。日本の老後。old man just dilapidated.」(dilapidatedは「荒廃した」「崩れかかった」などの意味)と高齢者の存在を否定するかのような書き込みや、「デブは本当に心が汚れています! 周りに冷たくされ、傷ついているからです! 日本国と高須様のお力で、全てのデブを脂肪吸引して頂けませんか? 美人が増えることで、日本全体が元気になればと考えました! 宜しくお願い致します!」と、肥満者の存在を否定する書き込みをしていた。

「これらの書き込みと障害者への一方的な殺意には、かつてナチスがユダヤ人とともに障害者や同性愛者も迫害した選民思想にも似た危険な考えが見て取れる」と関係者。ただ、実際に植松容疑者にそのような思想があったかは現時点で定かではない。

 一方で植松容疑者は昨年6月、ツイッターに「偏見を持つことは愚かなことです。自分で作った世界観しか見えなくなる。勉強になりました。私も強く逞しく生きたい。」とも書き込んでいる。

 1年前に偏見を戒めるような投稿をした男が、どうしてこんな凄惨な結果を招いてしまったのか? 被害者のためにも一刻も早い動機の解明が待たれる。