アジア圏のISテロはラマダン明けが危険

2016年07月10日 09時00分

バイク爆弾が多いため、トランクを開け、駐輪するのがタイ南部のマナー

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】バングラデシュ飲食店襲撃テロ(1日)はラマダン期間中に起きた。ラマダンとはイスラム教における断食月で、約1か月間、日の出から日没まで全イスラム教徒は飲食を断つ。喫煙や性行為も好ましくないとされる。敬虔な人だと唾液すら飲み込まない。

 国を越え、イスラム教徒みんなである種の修行に挑むため、ラマダンは聖なる期間とも解釈される。だからイスラム教国家同士が戦争状態にあっても、この期間だけは休戦してきた歴史がある。

 テロも減る傾向だったが、近年はむしろラマダン期間中を狙ったテロが増えているとの指摘も。「アフガニスタンやイラク、シリアではラマダン・テロが増えている。断食しているのでどうしても警備が緩むし『聖なる月』にまさかという油断もある。テロリストはそこを突いてくる」とは、イスラム圏で取材を続けるジャーナリストだ。

 実際、過激派組織「イスラム国(IS)」が5月下旬、ラマダン中の欧米へのテロを信奉者に呼び掛け、6月6日にラマダンが始まると、同12日に米フロリダ州オーランドのゲイクラブで銃乱射事件が発生。同29日にはトルコ・イスタンブールの国際空港で自爆テロ、今月3日にはイラクの首都バグダッドで爆弾テロ、翌4日にはサウジアラビアで連続自爆テロがあり、いずれも死傷者が多数出た。

 実はタイの南部でも、先のラマダン中にテロが多発。現地記者によると「頻発が常で、死者も少数だからか、タイメディアもあまり報道していないが、警察の検問への攻撃や、鉄道線路の爆破、路上爆弾が爆発したりしている」という。

 タイは国民の90%以上が仏教徒だが、南部のマレーシア国境付近では大半の地元民がイスラム教徒。このタイ南部を分離・独立させようという動きが10年以上も続いている。独立派の過激な集団はテロ行為へ走り、この10年での犠牲者は約6000人。警察署の襲撃、駅やショッピングモール、市場など人口密集地での爆弾テロ、僧侶の斬首、仏教徒の教師の殺害など、さまざまな事件を起こしている。

「ラマダン休戦などタイ南部では難しい話で、逆にテロが急増する期間。とりわけラマダンが終わり、新しい1年の始まりを祝う『イード』という祭りが行われる約1週間が危険といわれている。デパートなどでは特売イベントが多く、人出もあり、ソフト・ターゲットを狙うテロリストには格好の餌食」と前出ジャーナリスト。

 月の満ち欠けにより毎年少しずつ日にちがずれるが、今年のラマダンは5日に終わり、6日にイードの祭りが行われた。だから今が最もテロを警戒すべき時期なのだ。

 フィリピンの「アブサヤフ」、インドネシアの「ジャマ・イスラミーヤ」と、ISに同調する過激派組織も東南アジアで浸透。この1週間、アジア諸国へ旅行・出張する際には特に気を付けたい。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。