2014年の東京都知事選をめぐって元航空幕僚長の田母神俊雄被告(67)らが、運動員に報酬を渡したとされる公職選挙法違反(運動員買収)事件で、選対で出納責任者を務めた鈴木新被告(58)の公判が1日、東京地裁で行われ、検察側は懲役1年6月を求刑した。

 田母神被告と選対事務局長の島本順光被告(69)らと共謀して運動員らに計545万円を報酬として支払ったとして起訴されていた。

 検察側は「出納責任者なのに安易に加担した。高額で悪質性も高い。配ることや額を決めたのは田母神氏と島本氏だが、被告は異論を唱えなかった。責任をわきまえず、島本氏に唯々諾々と従った」と厳しく指摘。罪を認めていることを勘案しても懲役1年6月が相当とした。

 これに対して弁護側は「被告は従属的地位だった」と田母神、島本両被告の指示に従っただけと強調。さらに「すでに被告は社会的制裁を受けている。身に覚えのない額の使途不明金の横領犯と報道され、離婚を余儀なくされた。仕事も失った」と同情を誘った。鈴木被告は最後に「最初は軽く考えていましたが、今は重い罪を犯したと反省しています」と述べた。

 すでに公判が始まっている田母神、島本両被告は起訴内容を否認している。一体、誰を信じればいいのか。

 当時の選対関係者は「鈴木は単独でこんなことをできる人じゃない」と話した。

「弁護側の弁論にはいくつかウソが交じっていました。それは裁判を有利に進めるための戦略なのかもしれません。ただ、彼が従属的地位だったというのは本当のこと。それだけにかわいそうと思ってしまいます」(前出関係者)

 島本被告に誘われ出納責任者になったものの会計の経験はなかった。利用されてしまったのかもしれない。判決は14日。