閑静な住宅街を震撼させたバラバラ殺人事件が新たな局面を迎えた。

 東京・目黒区の区立碑文谷公園の池で切断された女性の遺体が見つかった事件で、警視庁碑文谷署捜査本部は27日、遺体が世田谷区野沢に住む無職・阿部祝子(ときこ)さん(88)と特定した。遺体のDNA型が阿部さんの所持品に付着したDNA型と一致した。

 捜査本部によると、阿部さんはマンションで一人暮らし。近隣住民によると「明るい感じの人。散歩していたし、ボケてはいないと思う」。

 阿部さんは19日に自宅で長男家族と食事をし、長男らは午後8時過ぎに帰宅。防犯カメラには長男家族を見送る阿部さんの姿が写っていたが…。

 翌20日午前、清掃業者が備品交換のため阿部さん宅を訪れたが、応答はなし。電話にも出ず、26日にこの業者が「阿部さんと連絡が取れない」と警視庁に相談した。

 捜査本部は、阿部さんが19日午後8時過ぎから20日午前の“空白の12時間”の間に事件に巻き込まれた可能性が高いとみて、付近の防犯カメラなどを調べている。

 神奈川県警の元刑事で犯罪ジャーナリスト、小川泰平氏は「警察が被害者の名前を発表したということは、犯人はほぼ絞れているんじゃないか。遺体を池に運ぶには大きなカバンが必要。防犯カメラを調べれば犯人は割れてくるだろう」と語る。

 不可解なのは、部屋に荒らされた形跡はなく、血痕もなかったこと。犯人は一体どこでバラバラにしたのか…。

 しかも、発見された体の部位から現時点で臓器は見つかっていない。その理由について捜査関係者は「臓器を残しておくと、水面に浮いてきてしまう。臓器の温度を測れば大体の死亡推定時刻もわかる。犯人の計画性がうかがえる」という。

 小川氏も「遺体をバラすのは作業をする側にも相当なストレスがかかる。裏を返せば、そこまでして遺体を隠したかったということ。それがバレたのだから、犯人は“そこまでする人”だ。阿部さんとの間にトラブルを抱える身近な人物である可能性が高い」と話す。捜査の範囲は日ごとに狭まっている。