閑静な高級住宅街が恐怖に包まれた。東京・目黒区の区立碑文谷公園の池で23日午前10時35分ごろ、人間の脚のようなものが浮いているのを清掃員の男性(80)が発見。さらに頭部や腰の付近、両腕や別の脚など6つの部位が見つかった。遺体の性別や年齢、死亡時期などは不明。池には食欲旺盛な肉食ミドリガメや体長80センチ超の巨大鯉が生息しており、遺体の一部を食べていたとみられる。犯人はなぜ、山奥などではなく住宅街の一角にある公園の池に遺体を投棄したのか――。

 バラバラ遺体が発見されたのは碑文谷公園内にある「弁天池」と呼ばれる場所で、水深は約1メートル30センチ。最初に見つかったのは、右脚で大腿骨から下の部分だった。

 その後の捜索で池から新たに頭部、腰の付近、両腕などが発見された。顔に傷付けられたような痕はなく、毛髪と歯も少量残っているという。一方で胸部や右腕の二の腕部分はまだ見つかっていない。遺体に刺し傷などの外傷は確認されなかった。

 遺体について当初は腐敗が進んでいたとの情報もあったが、ほとんど腐敗していなかったことがその後、捜査関係者への取材で分かった。初日の捜査では性別や死亡時期は判明せず。年齢も「成人していると思われる」(捜査関係者)という表現にとどまった。衣服や靴は着用しておらず、重しになるものはくくり付けられていなかった。

 警視庁捜査1課は、何者かが遺体をバラバラにして池に捨てた可能性があるとみて碑文谷署に捜査本部を設置。24日にも司法解剖して身元や死因を調べる。住宅街の公園で持ち上がった白昼のミステリー。人目につく可能性のある場所が投棄場所に選ばれた背景には、弁天池に生息する“巨大生物”の存在が考えられる。近隣住民の一人が語る。

「ペットで飼っていた亀をこの池に捨てる人が多く『亀公園』と呼ばれているんです。種類はミドリガメが大半で、少なくとも30匹はいますね。亀だから草食と思ったら大間違いで、彼らは食欲旺盛で何でも食べる。公園を訪れた人がエサをあげるせいで、体長30センチ以上に育つ亀もいます」

 事実、発見時、池に生息する複数の亀が遺体にかみついていた。

 ほかにも、全長80センチ以上の巨大鯉が生息しているという。こちらも与えられたものは何でも食べる雑食。この日、本紙記者も謎の巨大生物が池の上で跳びはね、大きな水しぶきを上げるシーンを目撃した。

 一部情報によると、残る胸部などに関しては、当局も亀や鯉のエサになって消失してしまった可能性を視野に入れているという。

 警視庁元刑事で犯罪社会学者の北芝健氏は「犯人は池に巨大生物がいるのを分かった上で、遺体の身元特定を遅らせるために、あえてこの池に遺棄したのかもしれません」と指摘。犯人は土地勘のある人物なのか。

「遺体をバラバラにするのは持ち運びを簡単にするため。投棄場所は海や山奥がいいと考えがちだが、そこに面する幹線道路には監視カメラが必ず付いている。警察が検問を張っていることも多い。そう考えると、住宅街の一角にある公園の池を投棄場所に選ぶのは、理にかなっている」(同)

 男女の痴情のもつれか、個人的な怨恨か、それとも金銭トラブルか…。動機は不明だが、頭部に残る毛髪や歯から被害者の身元はいずれ判明するだろう。

「身元が割れれば、あとは交友関係を徹底的に洗ってトラブルの有無を調べる。今の科学力であれば、死亡時期もいずれわかるだろう。過去にさかのぼり、付近の車の通行記録をチェックすれば、ホシ(犯人)の目星はつくはずだ。迷宮入りしそうな事件に見えるが、意外と早く解決するかもしれない」とは北芝氏。

 閑静な住宅街で起きた物騒な事件。真相究明が待たれる。