元航空幕僚長の田母神俊雄容疑者(67)が14日、東京地検特捜部に公職選挙法違反(運動員買収)の疑いで逮捕された事件では、報酬リストとあるビデオが逮捕の決め手になっていた。

 田母神容疑者は2014年2月の東京都知事選に出馬。落選後、選対本部事務局長だった島本順光容疑者(69)と共謀して、運動員5人に計280万円を渡した疑いがある。

 現金を配る際に島本容疑者らで「報酬リスト」が作成されていた。選挙を手伝った人物と報酬額を記載したもので、2000万円の予算が計上されていた。当時の陣営関係者は「島本氏がやって来て、『選挙応援でお金の持ち出しもあったでしょうから』と現金を渡そうとしてきました。だから、『そんなものは受け取れない』と拒否したのです」と明かす。

 島本容疑者は航空自衛隊に入隊し辞めた後、複数の国会議員の秘書を歴任している。「だから現金を配ることが法に違反することは分かっていたはずです」(前出の陣営関係者)。報酬リストは特捜部に押収されている。

 田母神容疑者は「現金を配ることを指示していない」と容疑を否認してきた。しかし、「(配布を)了解した」と話しているビデオが存在していた。捜査関係者は「このビデオは2本ある。どちらも会計担当者のSに横領を“白状”させる内容で、島本氏らがSを問い詰めるシーンもある。島本氏らが撮ったもので、“自分たちが事件を究明する側に立っている”というアピールのためだろう」と指摘する。

 ところが、田母神容疑者が「了解した」と話すシーンもあったため、特捜部が重大関心を示すことになってしまった。自己弁護のためのビデオがむしろ墓穴を掘った格好になったわけだ。

 田母神容疑者は閣下と呼ばれ、ネットでは保守勢力のスター扱いされてきた。衝撃は大きい。