息子に「母親を殺す」と“殺害予告”していた――。22日午前10時すぎ、さいたま市浦和区のさいたま地裁庁舎内で60代の元妻を包丁で切り付けたとして、殺人未遂の疑いで上尾市の無職松元隆久容疑者(69)が浦和署員に緊急逮捕された。松元容疑者は元妻を相手取り、離婚無効裁判を起こしており、この日は口頭弁論が行われる予定だった。

 浦和署によると「包丁を持った男が暴れ、女性が血を流して倒れている」と地裁職員が通報した。元妻はほおを切りつけられ軽傷を負い病院に搬送されたが命に別条はなく、本紙の取材に「けがは大丈夫です」と答えた。松元容疑者は犯行後に自傷したが、けがはなくその場で取り押さえられた。容疑を認めている。

 松元容疑者は元妻が自分の同意なく偽造した協議離婚届を提出していたことを知り、精神的苦痛を受けたとして、離婚無効と300万円の慰謝料を求めて提訴。この日は口頭弁論の予定だったが、その前に自ら“場外決着”に打って出た形だ。

 裁判資料によると、元夫婦は1970年に結婚し3男をもうけたが、松元容疑者のDVに耐えかねた妻が87年ごろに単身、家を出た。その後、郷里の市役所で協議離婚届を提出。別の男性と再婚していた。

 松元容疑者は昨年、長男が詐欺容疑で逮捕された際に担当弁護士を通じて離婚が成立していることや元妻が別の男性と入籍していることを知ったと主張。だが、元妻側は「30年も前のことをいまさら持ち出すことも、離婚を知らなかったというのもおかしい」と主張し真っ向から対立していた。

 子供たちの陳述書によれば、家族は日頃から酒乱の松元容疑者のDVにおびえる日々だったという。元妻が家を出た日も夫婦喧嘩の末、松元容疑者がウイスキー瓶で元妻を殴り「出てけ! 離婚だ、離婚だ!」と騒ぎ立てたという。

 さらに離婚成立を知ってからは、子供に「母親を殺して自分も死ぬ」などと今回の事件をほのめかしていたとも。

 松元容疑者が暮らすのは築50年の団地で、間取りは3K。昔は家族5人で暮らしていたが、近所の人によれば現在は一人暮らしのようだったという。

「奥さんが出ていって、水道関係の仕事で男手一つで3人の息子を育てていたはず。物静かな印象で酔っ払っているのも大声を出すのも聞いたことがない」という。

 元妻を殺害するために訴訟を起こして、おびき寄せたのだとしたら恐怖だ。