大阪府警の全65署中61署で約5000事件の捜査書類や証拠品1万点がボイラー室や倉庫に積み置かれていたことが判明し、捜査当局のずさんな管理体制に不信感は募るばかりだ。

 放置された書類や証拠品の中には30年以上前の事件もあり、約4300事件で時効が成立しているというが、そのうち約1000の事件では、容疑者もほぼ特定されていたという。府警は「優先順位が高い事件から捜査した結果、引き継ぎがおろそかになった」としている。
 なぜ“一件落着”を目前に、これほど多くの事件が見過ごされたのか。

 元警視庁刑事で犯罪社会学者の北芝健氏は「捜査本部が立ち上がり、注目を集める殺人事件などと違い、報道もされず金一封も期待できない地味な事件の処理なんて誰もやりたがらないのです」と警察のホンネを暴露する。

「弁護士をつけて刑事告訴されれば警察も動かざるを得ないが、被害者単独では捜査の進展について弁護士ほど騒ぎ立てることはないので後回しにされる」と、黙っていれば泣き寝入りせざるを得ない実情を明かす。

 このずさんさは、なにも大阪府警に限らないとも。全国の警察で意図的に捜査を投げ出している実態があるという。

「制服組で4日間に1日、朝から翌昼まで署に詰めるシフトが組まれるため慢性的寝不足で疲労が蓄積し、ヤル気がうせている。目の前に山積する案件から逃れるために頭は常に昇任試験のことでいっぱい。転勤が決まれば抱えている案件をほっぽり出していなくなる。事件解決なんて二の次、三の次なんです」(同)

 見つかった資料の中には、強制わいせつ事件で容疑者や被害者の名前や住所などが書かれていたのも数多くあった。現時点で目に見えた資料の流出や悪用がなかったのは、不幸中の幸いだったかもしれない。