神奈川・横須賀市の市営団地で14日、刃物を持った男と対峙した警察官がもみ合いになった際に拳銃を奪われ、発砲を許した。大失態はなぜ起きてしまったのか。

 県警浦賀署に14日午後2時30分ごろ、男の声で「母親に殺されるかもしれない」との110番通報があった。男性巡査部長(30)が駆けつけると団地7階の廊下に刃物を持った男がいた。男が刃物を置いたため取り押さえようとしたところ、抵抗され、もみ合いに。拳銃を奪われ、4発発砲され、3発が巡査部長の右脚や右腕に命中した。それでも取り押さえ、殺人未遂と公務執行妨害の疑いで松木貴嗣容疑者(37)を現行犯逮捕した。

 同じフロアに住む住民は「ベランダに突然、包丁を持った男の人がいた。帽子をかぶり、黒のジャージーで黒縁メガネ。(ベランダのドアの)鍵が開いてるのに『鍵が、鍵が…』とブツブツ言ってたし、その割に入ってくる様子もないから、ちょっとイッちゃってるなって印象だった」と振り返る。

 ベランダは隣室とパーティションで仕切られているが、松木容疑者はその下の部分を6枚も破って、隣から隣へとベランダを“大横断”した。「パーティションの下には鉢植えも置いてあったから、そこをぶち抜くなんてすごいパワーだよ」(同)

 警察官の拳銃は通常、体にひも状で結び付けられ、さらにホルスターと呼ばれる収納ケースに入っている。警察官が犯人に拳銃を奪われるだけでもあり得ない失態だが、発砲まで許したのだから目も当てられない。

 元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「犯人を取り押さえる時に両手がふさがって、拳銃を抜かれる可能性があるが、そうならないよう逮捕術を磨く。ただ最近はどこの警察も逮捕術の競技大会に力を入れ、実践的でないから今回のようなことが起こる。自分の命を守れなくて、人の命を守れませんよ」と嘆く。逮捕術の再教育が必要のようだ。