とんだ大迷惑だ。12日午前8時ごろ、東京都足立区のJR常磐線の綾瀬駅で乗客がホームから転落。駅職員が緊急停止ボタンを押し、綾瀬駅に向かっていた上り普通列車は駅手前300メートル付近で停車した。

 問題はこのあと。停車中の列車に乗っていた40代男性が何を考えたのか、優先席の窓を自力で開け、車外へ。線路上に降り、歩いて綾瀬駅を目指した。男性はその後、通報を受けた駅員に身柄を保護され、警察に連行された。

 一連のトラブルでJR常磐線と、直通運転を行う東京メトロ千代田線は約1時間にわたり運転を見合わせ、約10万4000人に影響が出たとみられる。

 警察の事情聴取に男性は「会社の大事な会議に遅れてはならない」と動機を説明。だが、結局は警察の“お世話”になり、会議に遅刻したことは言うまでもない。

 こんな“身勝手男”は損害賠償請求されてもいいレベルだが、警察にきつくお灸を据えられた上で、厳重注意処分となった。この場合「賠償責任は免れる可能性が高い」(鉄道関係者)という。

 酔っ払いが線路に転落し、電車を止めた時も厳重注意で済むことが多いという。アウトなのは“悪意”があるケースだ。

「イタズラで緊急停止ボタンを押したり、痴漢した犯人が線路に降りて逃走し、列車を止めるなどした場合は、刑事事件となるので、賠償請求されます」とは別の鉄道関係者。

 今月7日には、JR品川駅のホームで男性にヒジ打ちして線路に転落させた三浦春香容疑者(36)が傷害容疑で逮捕されたとの発表があった。この事件に伴い列車の遅延が発生。同容疑者は「突き落とそうとしたわけではない」と否認しているが、仮に“クロ”だった場合は「刑事裁判と並行して巨額の賠償金を請求されるでしょう。彼女はすべてを失うことになる」(同)。

 昔から「人身事故を起こすと遺族は億単位の賠償金を請求される」という話も聞かれるが、これについては「遺族感情を考え請求しないケースがほとんど。遺族に支払い能力もないことが多いですし」(同)という。