敬虔な仏教国なのにクリスマス大好きのタイ

2015年12月25日 07時30分

ツリー前は格好の自撮りスポット

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】クリスマスイルミネーションが街を彩るのは、暑い東南アジアでも同じ。とりわけ派手に聖夜を祝うのがタイだ。首都バンコクに10年在住する食品会社駐在員が明かす。

「年々、飾りつけも豪華になってます。街のあちこちで11月のうちから個性豊かなクリスマスツリーが立ち、まるで競ってるかのよう。夜はライトアップされ、その前でカップルが自撮りするのはもう定番。外食が増えるからウチも稼ぎ時です」

 タイは敬虔な仏教国。僧侶は敬われ、男は生涯一度は出家することが義務で、それが親孝行とさえいわれる。なのに、なぜクリスマスなのか。現地に詳しい記者によれば「日本と似ている」という。

「要はお祭り好きな国民ってこと。『キリスト教徒でもないのにクリスマス?』なんてツッコミは日本でも今どきもうやぼだが、タイはそれ以上。“楽しければそれでいいじゃん”“イルミネーションがキレイじゃないか”と、細かいことは考えない。そのこだわりのなさ、年末商戦など経済活動に結び付けるしたたかさは、日本人と同じ」

 キリスト教圏だとクリスマスは家族で静かに過ごす日だが、日本やタイでは恋人たちのイベントと化している点も似ている。この時期は訪タイ観光客も多く、ホテルは不足する。

「タイでは11月末にロイクラトンという祭りがある。本来は農民の収穫祭。罪や汚れを水に流すため、灯籠を川や運河、池などに流す。その様子がロマンチックだからか、ロイクラトンは恋人たちが愛を確かめ合う日でもある。この祭りのとき恋人や妻と過ごさないと、下手したら刃傷沙汰になる」(前出記者)

 クリスマスはこのロイクラトンと同じ位置付けで、もちろんバレンタインやハロウィーンなども盛り上がる。さらに年末年始はタイ各地でカウントダウンイベントが大盛況。BTS(モノレール)や地下鉄が終電を遅らせるのも日本と同じだ。加えて4月のタイ正月(ソンクラン)もある。

 年末年始、タイ行きの航空券は急騰するが、それでも大人気の年越しスポットだ。ただ、8月に起きた爆弾テロが再び起こるかも、と危ぶむ声もあり、現地で暮らす商社マンは逆にこの時期、日本へ帰るという。

「タイに『イスラム国』メンバーが入り込み、ロシア人を標的にテロを起こす可能性があるという現地報道が4日にあった。原油など天然資源で儲けたロシア人富裕層は、パタヤなどで不動産を買いあさっていて反感も強い。プーケットなどはロシア人の人気避寒地で、ロシアの地方都市から直行便があるほど。狙われるならそうしたリゾート地かもしれない」

 9年前の年越しの際にはバンコクの各地で連続爆弾事件があったが、背後関係などはいまだ不明のままだ。

 ☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。昨年から東京に拠点を移したアジア専門ライター。