内戦が続くシリアから西欧諸国を目指す難民の受け入れが、世界各国で大問題になっている。島を購入し、シリア難民に開放するとぶち上げたエジプト人富豪も現れた。シリア難民の避難島は実現するのか?

「イタリアとギリシャの政府に島を売ってくれと手紙を送った。島には港を造って、食料と電力も供給する。インフラも整備し、難民のための町をつくりたい」と提案したのは、エジプト人のナギーブ・サウィリス氏(61)だ。

「サウィリス氏はエジプトでシェア2位の携帯電話事業者『オラスコムTMT』の会長。オラスコムはエジプト以外にシリア、レバノンで事業展開し、北朝鮮でも独占契約を結び、携帯ネットワークがなかった同国で携帯電話を普及させたことでも話題になった」(IT関係者)

 世界長者番付によれば、サウィリス氏の資産は約29億ドル(約3480億円)を誇る。過去にはエジプトの美術館からゴッホの絵画が盗難された際に、1500万円の懸賞金をかけたことでも話題になった。今回も島にトルコの海岸で遺体で見つかった難民男児を「アイラン」と命名するなど、“売名行為”と見る向きも少なくない。

 一方、難民の数は今後も膨れ上がる見込みだ。

 シリア事情に詳しいジャーナリストの常岡浩介氏は「既にシリアの人口(約2200万人)の3分の1に当たる約700万人がトルコやヨルダンに出ているが、今は力で押しとどめられている。欧州各国で受け入れ態勢ができれば、何百万人が移動します」と指摘。仮に“避難島”が用意されたとしてもすぐにパンクするのは必至だ。

 またシリア難民は着の身着のまま国を飛び出してきたわけではないという。

「全員ではないが、これまで普通に生活していた人たちが、財産を売り払って、出てきている。お金を持っているので、トルコで追いはぎに襲われた事件もあった。普通、生活できるお金を求めて、難民になるが、彼らは出稼ぎ目的の“経済難民”ではないんです」(常岡氏)

 シリア難民は、男児の遺体写真で同情を集めているが、その実情に触れた際、処遇を巡る混乱はまだまだ続きそうだ。