日本最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)が、分裂することが分かった。山健組(神戸市)など10を超える有力直系(2次)団体が離脱、新団体を立ち上げる見込み。山口組をめぐっては1984年から89年にかけて「山一抗争」と呼ばれる分裂抗争が起きたが、30年たって、再び日本中を巻き込む大抗争が危惧されている。

 結成100年となる今年、山口組が二分されることになりそうだ。篠田建市(通称・司忍)6代目組長(73)の出身母体である弘道会(名古屋市)に近い組織は残り、日本中に名を知られる山健組(構成員約2000人)や、宅見組など10を超える有力組織が離脱する見込みだという。

「山口組は山健組や宅見組などのトップら幹部5人に絶縁、8人に破門の処分を下したようだ」と暴力団に詳しい関係者。離脱する山健組などは近いうちに新組織を立ち上げる見通しで「新しい組織の名称は『神戸山口組』が有力のようだ」(前出関係者)という。

 以前から山口組の運営方針をめぐって、司忍組長、ナンバー2の高山清司若頭の出身母体である弘道会系組織と、山口組5代目組長の出身母体である山健組の間で、溝が生まれているとささやかれてきた。山口組内部で弘道会系組織の“発言力”が強くなったことで、その溝は徐々に大きくなり、ついに分裂に至った。離脱する組織に近い関係者は言葉少なに語る。

「まあ、名古屋が(山口組内部での“発言力”が)強くなりすぎたってことじゃないかな」

 山口組をめぐっては1980年代に「山一抗争」と呼ばれる大規模な抗争が起きた。

 竹中正久4代目組長の就任に反対する一派が山口組から離脱し一和会を結成。85年には分裂した一和会系組員が竹中組長を射殺する事件など、5年間で大小合わせて317件の抗争が発生した。

 それだけに、今回の分裂で抗争が起きる可能性もある。警察当局は警戒警備や取り締まりの強化、一般市民への危害の未然防止などを徹底する意向だ。

 果たして大規模な抗争に突入する可能性はあるのか?

「若い衆の小競り合いはあるかもしれないが、すぐに組織を挙げての抗争にはならないんじゃないか、とは言われている。暴力団に厳しい時代ということもあるし、お互いに相手の出方を見るのではないか。ただ一発銃声が鳴ると、どうなるかは誰にも分からない」(捜査関係者)
 全面抗争勃発となれば「山一抗争」の時よりもはるかに大規模かつ全国的なものになる危険性も指摘されている。

「1980年代当時と比べると、山口組は関東地方にもかなり進出している。また弘道会、山健組とも、それぞれに関東の暴力団との付き合いもある。これらの事情を考えると、日本全国どこが抗争の舞台になってもおかしくないし、どこまで抗争が広がるかは、予想もつかない」(暴力団関係者)

 警察庁によると、2014年末時点の山口組の組員は1万300人。山形、広島、沖縄を除く44都道府県に進出し、準構成員らを含めると2万3400人。全国の暴力団関係者の43・7%を占めている。

 その山口組が分裂、抗争となった場合、各方面に多大な影響を及ぼすことは確実だ。暴力団関係者はもちろん、一般の市民も事の推移を注視している。