タイ・バンコクで17日に起きた爆弾テロ事件の現場となった「エラワン廟」の参拝者が激減しているという。

 テロ再発を恐れる人が多いのだろうが、実はこのかいわい、もともといわくつきだった。この一角で1956年、ホテル建設がスタートしたが、事故が多発し、人的被害も相次ぎ、現場作業員が工事をボイコットする事態に発展。信心深く、霊の存在を信じる地元民は「土地に取りついた悪霊の呪いだ」と断定。高名な占い師が呼ばれ、占星術の結果、悪霊を鎮めるためヒンズー教の神ブラフマーを祭ることを決めた。これがエラワン廟だ。

 以後は事故もなく、高級ホテル「グランドハイアット・エラワン」が無事完成。そうした経緯から聖地として人気スポットになっていた。

「日本のメディアがパワースポットとして取り上げ、日本人観光客も殺到したが、彼ら狙いの詐欺師やボッタクリが急増。一時は日本大使館が廟周辺を名指しし、注意喚起していた」(駐在記者)

 10年続くタイの政治混乱では廟前がデモ会場になった。何万人という市民が座り込み怒号を上げ、爆弾や花火などが投げ込まれたことも。バンコクで大騒乱が起きた2010年には、廟近くにある大型デパート「セントラルワールド」が放火され、炎上崩壊した。

「周辺で死者が多数出て、しばらくは『幽霊が出る』という噂が絶えなかった。デパートが再開しても、客足はなかなか戻らなかった」(前同)

 そこに今回のテロ。周辺で死亡した人はここ数年だけでもかなりの数に上った。「タイ人にとって参拝は生活の一部で大事な行為だけに場所は選びたい。『やはり良くない土地だったのでは』と言われだしてるエラワンかいわいは、風評だとしても訪れにくい。タイ人の友達は『占いをして、新しく参拝する場所を考え直すよ』と言ってます」と現地で暮らす日本人。

 タイ警察庁は20日、犯行グループが大規模なネットワークを持ち、現場探し係、爆弾準備係、逃走ルート発案係など、外国人を含む10人以上が関与しているとみている。