仮想通貨ビットコインの取引所マウントゴックスで巨額のコインが消失した事件で、運営会社「MTGOX」の代表取締役マルク・カルプレス容疑者(30)が水増しした米ドル口座残高の総額が、日本円で数十億円に上るとみられることが3日、捜査関係者への取材で分かった。

 カルプレス容疑者は、水増し分でビットコインを購入していたといい、警視庁は一連の不正操作が同社の経営破綻の一因になったとみて、詳しい経緯を調べている。同日、東京都豊島区にあるカルプレス容疑者の自宅を家宅捜索した。

 カルプレス容疑者は2013年2月に、取引所のシステム内にある自分名義のドル口座残高を100万ドル(約1億2400万円)水増しした疑いで1日に私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕された。容疑を否認している。

 捜査関係者によると、カルプレス容疑者は取引所の運営を始めた11年ごろから少なくとも約30回、現金やコインの残高を水増しする不正操作をしていたとみられ、現金の水増し総額は数十億円に上るという。口座残高の水増しは、顧客側からは確認できないようになっていた。

 事件では、ビットコインという「最先端」を感じさせる名称と、国家や中央銀行に管理されない仮想通貨というコンセプトが世界を魅了した。

 しかし詐欺研究家の野島茂朗氏は「偽装した情報を巧妙に顧客に見せてだましながら、顧客から金銭を詐取するという意味では、夢の仮想通貨ではなく、単なる虚構通貨を利用した詐欺ではないでしょうか。外国為替のFX詐欺、アービトラージ(裁定取引)詐欺など、海外投資を舞台に、事故を装って客から集めたカネを着服する典型的な手口と言えます」と語る。

 日本でこのような詐欺は、組織ぐるみで巧妙に行われる。複数の法人を関与させて責任の所在を不明確にしたりして、法的な追及を困難にするためだ。

「今回、フランス人社長1人の私欲のために、お金の流れがシンプル過ぎました」と野島氏は指摘する。