約1500億円の不適切な会計処理が発覚した東芝は21日、関与したとされる田中久雄社長(64)、前社長の佐々木則夫副会長(66)、前々社長の西田厚聡相談役(71)の歴代社長3人を含めた取締役8人の辞任を発表した。刑事事件に発展する可能性は低く、幹部の引責辞任で決着濃厚の気配だ。

 今回の事態は、証券取引等監視委員会への関係者からのタレコミで発覚。第三者委員会が調査したところ、2009年から14年の第3四半期までに計1562億円の利益の水増しが判明した。

 ただ、第三者委員会の調査期間はわずか2か月で、対象も時効5年の金融商品取引法に照らしたため「比較対象で08年から調べたが、その前から(不正を)やっていたかは分かりません」(第三者委員会)。

 今後、社内調査で水増し額はさらに膨れ上がるとみられるだけに、お手盛り感は否めない。

 粉飾決算となれば、過去のライブドアやオリンパス事件のように逮捕劇となるが、第三者委員会はあくまで「不適切」の表現にこだわっている。田中社長も「不適切な会計処理を指示したという認識はありません」と自身の関与を否定。騒動の責任を取っての辞任と強調した。

 これには約53億円の粉飾決算で上場廃止、実刑判決となった堀江貴文元ライブドア社長(42)も、ツイッターで「なんとかして屁理屈ぶっこいて上場維持させるという笑」と皮肉った。

 数十億円程度の課徴金や、数百億円になりかねない株主や投資家などからの損害賠償訴訟こそ避けられないが、刑事事件や上場廃止などの最悪の事態には陥らない公算が大きい。

 証券アナリストは「東芝が決算をごまかしたのは、06年に米原子力大手ウェスチングハウス社を買収したことが原因とみられている。約6000億円もの買収劇で巨額の損失や裏金が発生し、穴埋めが必要になった。さらに11年の福島原発事故発生で原発事業そのものがマイナスに落ち込んだ」と指摘する。

「原発は国策であり、政府や経産省も歴代社長の辞任で騒動の幕引きを図りたいのが本音」(同)

 このまま臭いものにフタをされてしまうのか。