“酒鬼薔薇”臨床心理士の告白「本は出すべきではなかった」

2015年07月17日 06時00分

 長崎県佐世保市の女子高生殺害事件で、加害同級生少女を医療少年院送致とする決定が13日に言い渡され、遺族らに衝撃を与えた。医療少年院で治療を施された人物といえば、1997年の神戸連続児童殺傷事件の“酒鬼薔薇聖斗”こと少年Aが有名。「元少年」となったAは本当に更生したのか――。2000年ごろにAの治療に携わった臨床心理士の鈴木氏(仮名)は、本紙に「本は出すべきではなかった」と述べた上で、再犯の可能性についても言及した。

 元少年Aが出した手記「絶歌」(太田出版)は、いまだに波紋を広げている。累計発行部数はついに25万部を突破。一方で図書館は扱いに頭を悩ませ、書店によっては取り扱いを中止する店も…。同書には事件に至る経緯や現在の心情が記されているが、読者のなかには「心から反省しているのか?」と違和感を覚える人も多い。当時、世間を震撼させた猟奇事件の犯人による告白には、各界から反発の声が上がっている。

 被害者男児の父親・土師守さんは、発売日当日に出版中止を求める声明を発表。先日も産経新聞の取材に「息子は2度殺された」「匿名で本を出し、遺族を傷つける。ひきょうだ」と怒りをあらわにした。

 芸能界からも本紙客員編集長のビートたけし(68)が「手記出版は、日本人が培ってきた文化をすべて否定するような行為」と糾弾するなど、波紋は広がるばかりだ。

「いままで何百人、何千人と精神疾患を抱える人を診てきたけど、彼は…ワンアンドオンリーでしたね」

 そう回想するのは、Aの治療に関わった鈴木氏だ。鈴木氏も「社会通念上、本は出すべきではなかった」と吐露。同氏がAと面会したのは、00年ごろ。Aが医療少年院を本退院していたのが05年だから、まさに更生期間の真っ最中だ。

「複数回カウンセリングに関わりました。当時Aは工場で働いており、口数は少なかったけど、あいさつもするし暴れたりもしなかった。ただ、ほかの子と空気が違うというか…。独特の雰囲気を持っていた。冷たいナイフの先に炎が燃えたぎっている感じでしたね」

 同氏はAを人への共感性が著しく欠如した「性的サディスト」と診断。異常性欲の持ち主で、それがサディズム(攻撃性)と結びついているというのだ。

 手記では亡き祖母を思い出して自慰行為をしたことや、猫の頭蓋骨を砕いた時に射精したことを明かしているが「カウンセリングでは被害者男児を殺害した現場でも2~3回射精したと話していた」(同)。同書ではそうした部分はカットされている。鈴木氏が続ける。

「性的サディズムは年齢とともに改善されることもあるが、そこから反社会的人格障害になることもある。残念ながら、日本の医療でこうした心の病は完治させることができない。本気で治そうとすると、主治医も巻き込まれてしまうからです」

 事実、一部週刊誌では治療に当たった女医をAが襲ったとも報じられたが、同氏は言葉を選びながら「あったと思います…」。

 Aは特別な“能力”も持っていたという。何年も前の出来事を詳細に説明することができたのだ。同書でもその記憶力の一端について触れられているが、鈴木氏いわく「見たものを瞬時に記憶する直観の持ち主、サヴァン症候群である可能性があると判断しました。そこに性的サディズムが加わるのだから、犯行当時を鮮明に思い出し、自慰行為にふけることも考えられた」という。

 その後、Aの心の病がどこまで治ったかは分からない。万が一、昔と変わらぬままだったら…。

 鈴木氏は「事件から18年。いまごろ彼の心のマグマはぐつぐつと煮えたぎっていると思う。その辺りは捜査機関も把握しており、行動観察はしているとは思いますが…」(同)。再犯の可能性があるということだ。

 Aがこのタイミングで手記を発表した背景には、遺族への贖罪(しょくざい)の気持ちもあるだろう。ただ、現時点でAが印税を遺族に寄付するという話は聞かない。ネット上の読者レビューでは「自己顕示欲だ」という声も飛んでいる。

 鈴木氏は「自己顕示欲より、自己理解。あとは世間に自分の境遇を共感してもらいたいのでは」と分析する。今後も注視していく必要がある。