何が“ビッグダディ自衛官”を自宅放火に走らせたのか

2015年07月08日 06時00分

“新幹線放火・焼身自殺”の衝撃も冷めやらぬなか、8人の子だくさん家族の“ビッグダディ”が自宅に火をつけ、子供とみられる4人が焼死、行方不明者も出る痛ましすぎる事件が起きた。一家が住んでいたのは大分県杵築(きつき)市。現住建造物等放火の疑いで6日、同県警杵築日出(ひじ)署に逮捕されたのは父親の海上自衛官末棟(すえむね)憲一郎容疑者(40)だ。妻と口論になり「家の中に火を付けたことは間違いない」と容疑を認めている末棟容疑者は「犬も食わない」夫婦げんかくらいで、なぜ火を放ったのか?

 近隣住民によると、5日午後11時55分ごろ、燃えさかる自宅から逃げ出した末棟容疑者は子供たちに「飛び降りろ!」と叫んだ後「俺が悪かった」と泣きわめいた。さらに別の近所の人から「助かったな、お父さんは」と声をかけられると「いや、自分がおった方が良かったんか、おらん方が良かったんか分からん」と意味深なことをつぶやいたという。

 火災で行方不明になったのは、長女悠佳梨さん(ゆかり・14)、四男雅祐君(まさひろ・9)、次女真由美さん(7)、五男滋ちゃん(5)。家には他に妻(42)と次男、三男、三女がいた。

 県警によると、出火当時、子供の多くは2階にいたが、容疑者と妻は1階にいた。県警は妻との間で口論になった可能性があり、妻が経緯を知っているとみて事情を聴いている。

 末棟容疑者は、高校卒業後の1993年に海上自衛隊に入隊。広島県江田島市に単身赴任しており、休暇を利用して自宅に帰っていた。

 一家について近隣住民は「上の子供たちはみんな柔道をしていた。あと、平日はお母さんと子供たち、週末はそこにお父さんも加わって、近くの畑を耕していた。収穫した野菜を近所の人に配っていて仲が良さそうだった」と語る。

 一方で、別の近隣住民は「お父さんがかなり厳しい人のようで、帰ってきた時はたまに怒鳴り声が聞こえてきました。生活態度について奥さんや子供たちに怒っている様子でした」と証言する。

 また近所の女性は「車に乗るときは『整列!』と号令。規律正しくしつけも厳しい印象だった」という。自衛隊ではベッドメーキングの際、シーツにわずかなしわがあるだけで何度でもやり直し。食事も風呂も決められた時間を1分でも過ぎると罰則がある。整列時には指先までピシッと神経を張り巡らさなければならない。「妻子に対する接し方というより、部下への接し方のようだった」という声もある。自衛隊式の規律を家族にも強いていたのだろうか。

 自衛隊仕込みの厳しさが妻子に必要以上のプレッシャーをかけていたようだ。実際に、この大家族は過去に“警察沙汰”を起こしていた。

「今から1年ぐらい前、末棟さんの家の子供が夜に、はだしで家を飛び出して、自宅から約1・5キロ離れたコンビニにいたことがあった。本人は家出したと言っており、通報を受けた警察が母親に連絡して、迎えに来させたそうなんですが、それに近いことは、これまで何度かあったようです」(末棟家を知る人物)

 別の知人も「末棟さんの子供は学校でも、ちょっとヤンチャな子と仲が良くて、周りの子に乱暴なふるまいをして問題を起こすことがあった。やはり兄弟が多いから親御さんも面倒を見切れないのかも…と思った」と証言する。

 末棟容疑者の妻は警察の取り調べに「ささいなことから口論になり、夫が火をつけた」と供述。末棟容疑者は「自分が火をつけたことは間違いない」と話している。

 ただでさえ自殺率が高い自衛官。大家族と離れ、子供たちにも目が行き届かず、その成長過程での悩みなどが膨らんで、感情の起伏が激しくなっていたのかもしれない。また、自衛隊をめぐっては、安倍政権の推し進める集団的自衛権の行使容認などで、今後は命の危険にさらされる可能性が高まるなどの論調が聞こえてくることとも、無関係ではなかったのかもしれない。

 心の中にどんな闇が渦巻いていたにせよ、残された家族があまりにもふびんだ。