【新幹線】焼身自殺テロの波紋「大惨事が起きてもおかしくなかった」

2015年07月02日 06時00分

小田原駅に到着した被害車両。消火器を持った消防員も待機

【新幹線焼身自殺】2000人の乗客の命が危険にさらされる!! 6月30日午前11時40分に起きた新横浜―小田原間を走行中の東京発新大阪行きの東海道新幹線「のぞみ225号」での焼身自殺は、国際テロ集団に“日本の大動脈”が格好の標的となる材料を与えてしまった。危機管理の専門家たちは「テロの危険性が改めて高まった」と声をそろえ、爆薬を持ち込むことで一度に「2000人の命を狙うことが可能」との指摘も出た。安全神話を誇った新幹線は“焼身自殺テロ事件”で、最も危険な乗り物となる危険性もさらした。

 焼身自殺した東京・杉並区の林崎春生容疑者(71)は、ガソリンのようなものを1両目の前通路で自らかぶり、火をつけた。乗客の持ち物や上着が燃えていたことから、車両内で爆発的に炎が広がったとみられる。死者2人、重軽傷者26人は、東京五輪開催の1964年開業以来“新幹線史上”最悪の惨事。“最も安全な乗り物”と称賛された新幹線神話は崩れた。神奈川県警は死亡した林崎容疑者を現住建造物等放火容疑で捜査している。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は火災だけでなく、大惨事が起きてもおかしくなかったと指摘する。

「ガソリンの量と空気が十分な混合気だったならば、燃えるのではなく、爆発していたでしょう。トイレのような完全密室で火をつけていれば、今回のような被害にとどまらず、大爆発を起こし、脱線していてもおかしくなかった」

 新幹線の防火対策は厳しく、消火器も1車両に2つ設置されているが、これはあくまでボヤ程度を想定してのもの。

「もし男が通路の端から端までガソリンをまき、火をつけていれば、1000度くらいの急激な温度上昇になって、高濃度の一酸化炭素で、一瞬にして多くの乗客が命を落としていた」(金子氏)

 かねて新幹線のセキュリティーの脆弱さに警鐘を鳴らしていた軍事評論家の神浦元彰氏は、さらに衝撃的な指摘をする。

「新幹線は地震や雷などの自然災害への対策はとられているが、人為的な事故が起きることは想定されていない。今回、新幹線は初めて人的災害=テロの怖さに直面した。時速300キロで走り、1000人前後もの乗客数は旅客機3機分に相当する。テロリストには格好のターゲットなんです」

 ポリタンクに入ったガソリンがいとも簡単に持ち込まれたように、日本の新幹線は荷物検査がなく、事実上何でも持ち込める環境にある。

 神浦氏は「トランクやボストンバッグに詰めた爆薬を携帯電話など遠隔操作でいつでも爆破できる時代。最悪のケースでは、新幹線の上下線がすれ違いざまに爆破されたらどうなるか。車両は吹き飛び、脱線する。計2000人が巻き込まれる事態となる」と最悪のケースも想定できると言う。

 今回のニュースを見て、テロリストがほくそ笑んでいるのかと想像すると背筋が凍りつく。

 恐怖の指摘をするのは国際テロ研究の第一人者、青森中央学院大学の大泉光一教授も同様だ。

「爆発物を網棚に置いて爆破テロを起こすなどたやすいことだと、世界中に宣伝してしまったようなもの」と語り「スペインの新幹線AVEでは手荷物をX線に通すことが義務付けられているほか、乗客以外の送迎者がホームに立ち入ることを禁じています」。

 確かに日本でも、金属探知機やX線検査機、爆発物探知犬などの導入が叫ばれているが…。

「正直な話をすれば、今後もテロ対策を行うのは難しい。飛行機のような手荷物検査は時間もかかるし、液体や火器などの持ち込みを禁止すると、利便性を大きく損ねることになるので現実的に厳しい。そもそも、どれだけ危険物の持ち込みを防止しても、今はドローンなどを使って線路に爆発物が仕掛けられたら…など、外部から攻撃を受ける恐れもあるわけですから」(鉄道関係者)

 来年には伊勢志摩サミット、2020年には東京五輪が控える。世界的なイベントは、テロリストに狙われる危険も高まるだけに、悠長なことは言っていられない。