愛知県刈谷市で6日夜、県立高校1年の男子生徒が集団暴行を受けた後に逢妻(あいづま)川で溺れ行方不明になっていた事件で県警は9日、溺れた現場から約350メートル下流で遺体を発見、男子生徒と確認した。遺体は刈谷市一ツ木町の吉田達哉さん(15)。暴力行為法違反容疑で14~16歳の少年3人が逮捕され、今年2月に川崎市で起きた上村遼太さん殺害事件との共通点から“第2の川崎事件”ともいわれる。その酷似点を専門家がプロファイルした。

 発見された吉田さんに目立った外傷はなかった。10日に司法解剖して詳しい死因を調べる。

 7日に逮捕された少年3人は6日、熱田まつりに出かけた吉田さんを仲間の少年3人が呼び出し、逢妻川の堤防で殴る蹴るの集団暴行をしたうえ、川で泳ぐことを強要した疑いが持たれている。

 少年らは容疑を認めて「(吉田さんに)彼女がいるのに、ほかの女子を祭りでナンパしたことに腹が立った」と供述。一方で「『対岸まで泳いで戻って来たら許す』と言ったら自分で靴を脱いで川に入った。溺れて『もう無理、助けて』と声を上げたので助けに入ったが姿が見えなかった」とも話しているという。

 吉田さんは、自分から積極的に級友らとコミュニケーションを取り、周囲から慕われていた。4月に県立高校に進学すると、書道部に入部した。同校の教頭によると友達思いで、優しい生徒だった。

「授業には欠かさず出席していた。まだまだ将来があったはずなのに、こんなことになるなんて」。球技大会では、中学時代に得意だった卓球で活躍した。女性にモテていたようで「現在の彼女の前にも数人の恋人がいたそうです」と地元関係者。

 犯罪ジャーナリストの北芝健氏は「“嫉妬”という憎悪が根底にある点で、川崎事件と酷似している。川崎事件の犯人は『カミソン(上村さん)が人気者なのでねたんでいた』と供述している。今回も、『ほかの女を口説いた』というのは口実にすぎず、常日頃からたぎらせていた彼女持ちの被害者への嫉妬が暴発したのでは」と分析する。

 さらに悪質なのは“口裏合わせ”の可能性だ。

「川崎事件では逮捕された少年3人が取り調べ段階で『自分は殺害に加わっていない』『アイツがやった』などと“仲間割れ”が報じられている。今回の事件は暴力がエスカレートしたもので計画性はないが、被害者の姿が確認できなくなった時点で口裏を合わせた可能性が極めて高い」

 少年らは「助けに入った」と供述しているが、果たしてどうなのか。

 北芝氏は「大体、反目する相手を“川岸まで行って戻って来たら”なんて簡単な行為で許したためしがない。暴力がエスカレートしている中、そんな折り合い条件を出すことは考えられず、助けようとしたなどの供述は虚偽性が高い」と指摘している。