転覆中国船に違法改造疑惑

2015年06月04日 10時00分

 まるでセウォル号だ! 中国湖北省荊州市監利県の長江(揚子江)で1日夜、456人が乗った客船「東方之星」が転覆した事故の原因を巡って「船の改造も大きな要因」との声が出ている。竜巻などの気象の変化が主因とみられるが、人為的な側面も浮上。船長と機関長が早々と救出された一方、400人以上の乗客らが船内に取り残されている状況は、昨年4月に起きた韓国のセウォル号沈没事故を連想させる。韓国では事故対応で政府も激しく批判されたが、中国政府は内外からの批判に対し“奥の手”を用意しているとみられる。

 中国当局は2日夜から3日にかけても徹夜で捜索・救助活動を続けている。これまでにガイドら7人が死亡、10人以上が救助されたが、400人以上が行方不明。多くが船内に閉じ込められたままだとみられる。李克強首相(59)が、現場入りして陣頭指揮を執るが、救助活動は難航している。

 当局は救助後に拘束された船長と機関長から事情を聴き、原因究明に着手。中国の気象当局によると、長江では当時、竜巻が発生していた。当局は強風のため横転、転覆した可能性のほか、船長の判断や操船に問題がなかったかについても調べている。

 中国のニュースサイト「財新ネット」は2日、東方之星は建造後、上層階の客室や防火施設などを含めて複数回にわたって改造されていたと報じた。同サイトによると、改造は建造した造船会社とは異なる設計グループが行った。

 違法改造疑惑が出てきたわけだが、中国人ジャーナリストの程健軍氏はこう語る。

「東方之星は、定員を増やすため不安定なはしけのような川船を高層にした危ない構造だという噂はありました。長江の三峡巡りは人気ですが、水深が浅い場所も多く、水量も季節や雨の前後等変化が大きい。そのため多くの観光船が、川底に座礁することを恐れてフラットな船底構造にしている。ところが、このフラット構造では船が横滑りもしやすく、高層であることも相まって、転覆しやすい状況を作り出していたといえるかもしれません」

 客船は強風で転覆した可能性が指摘される。だが、改造によって船体のバランスが不安定になっていた恐れもある。

 昨年4月に沈没した韓国の旅客船セウォル号では、乗船していた476人のうち295人が死亡し、9人の行方がいまだ分からない。改造で不安定になったことが転覆の原因と指摘されたが、今回の中国船は多くの乗客が船内に閉じ込められていながら、船長や乗員が早々と救助された状況も酷似している。

 中国当局は、2011年に浙江省温州市で40人が死亡した高速鉄道追突事故の際など、大規模な事故や事件のたびに報道規制を敷いている。今回の事故でも、中国の宣伝当局が国内の報道機関に対し、新華社などの国営メディアや政府が発表した情報のみを報道するよう通知したことが2日、分かった。国内の各メディアが独自に事故の原因や責任を追及し、政府批判に発展することを警戒したとみられる。

 関係者によると、通知は1日夜に事故が起きてから間もなく出され、地元メディアに記者を現場に配置しないよう要求。「全ての報道は、権威あるメディアの情報に従うこと」と指示しているという。程氏は「皆が口出しできないのは、東方之星の運営会社が湖北省の党幹部一族の所有であることが大きいと言われています」と指摘する。

 高速鉄道事故では、中国政府は情報統制から、先頭車両を埋めて“証拠隠滅”というもみ消しに転じた。今回の転覆事故では習近平指導部は、李首相を現場に派遣し、全力で救助に当たる姿勢をアピール。救出がうまくいけば、指導部は称賛されるだろうが、犠牲者が多くなれば、真相は鉄道事故のときのように闇に葬られるかもしれない。