気象庁は13日、噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられている箱根山(神奈川県箱根町)を上空から観測し、大涌谷で蒸気が勢いよく噴出しているのを確認した。火山性地震も観測し、活動が活発な状態が続いているとした。ゴールデンウイークを直撃した火山活動で地元の観光業者は大きな打撃を受けたが、とくに温泉にとっては「弱り目にたたり目」とでもいうべきタイミングの悪さだったようだ。

 4月26日から増加傾向となった箱根の火山性地震はその後、増減を繰り返しており、気象庁は小規模な水蒸気噴火が起きる恐れがあるとして警戒を呼びかけている。

 こうした動きを受け、多くの観光客が箱根観光を回避しているのは、これまで広く報じられている通り。地元では「今回ぐらいの規模の火山活動はこの10年20年で何度か見られている。昨年の御嶽山の事故の影響で気象庁やマスコミが大げさになりすぎているだけ」(地元観光業関係者)という声も強く、今回の事態にどこも困惑しきりだ。

 しかも、この火山問題が発生する直前まで別の事案にも頭を悩ませられていた。県内の別の観光業者は「箱根はもちろん、全国の温泉施設がドローン対策をどうすべきかと考えているところでした」と明かす。

 4月22日に首相官邸屋上で小型無人機・ドローンが発見された事件は日本中に衝撃を与えた。手軽に遠隔操作できるドローンが、放射性物質を運べたり、人が立ち入ることができない場所に簡単に侵入できるからだ。

 そこで政府は12日、今回の事件を受けてドローンの安全な運航に向けたルールの骨子を5月下旬までにまとめる方針を決めた。所有者の把握や運航範囲の規制などを検討する。菅義偉官房長官は記者会見で、今国会中の成立を目指す意向を表明した。

 法案とは関係なく、全国の温泉施設も何らかの対策を打ち出す必要に迫られているという。前出の観光業者によれば、露天風呂は当然、設計段階において、地上からではたとえ遠方からの盗撮でもできないよう入念に計算されており、これまでの盗撮被害も多くは直接浴場に撮影機材を持ち込む手口だったという。

 そのため、近年では脱衣場での携帯電話使用を禁止するなどして、カメラの持ち込み対策を強化する施設が増えていた。だが、ドローンの普及で外部からの盗撮対策にも力を入れなければいけなくなった。

「遠隔操作もできるから、堂々とやって来てバレたらすぐに逃げることも想定される。さらに、ドローンで近隣の風景を空撮しているうちに偶然風呂が写りこんでしまう、悪意のないケースも考えなければいけない。浴場を完全に覆ってしまえば露天の意味もないし、具体的な対策に頭をかかえているところだったんです」(前出の業者)

 さらに、こちらも間が悪かった。連休のかき入れ時直前に活発化した火山活動同様、官邸ドローン事件も、最も厄介な時期に発生してしまったという。

「実は露天風呂の盗撮を一番警戒しなければいけないのは、これからの季節、夏の昼から夜にかけての時間帯なんです。被写体がより鮮明に写るのが、湯気の少ない暖かい季節。そして、夜間より昼間、というわけです。つまり、準備期間が全くない中で対策を迫られている現状です」(同)

 箱根の温泉業界にとっては次々と問題が押し寄せて来ている状況。日本有数の観光地は今、地中以上に大きく揺れ動いている。