地下鉄サリン事件など4つの事件で殺人罪などに問われたオウム真理教元信者の高橋克也被告(56)に30日、求刑通り、無期懲役が言い渡された。地下鉄サリン事件から20年。17年間、逃亡生活を続けた“最後の特別手配犯”に裁きが下った。

 中里智美裁判長は主文から読み上げ「被告の関わった事件は人命軽視の度合いが高い。一般社会では許されない殺人さえ自己の宗教的利益を得るために正当化したにすぎず、非難を減じる事情もない」と理由を読み上げた。高橋被告は判決の瞬間も、判決も含めて39回の全公判を通して貫いた無表情を崩すことはなかった。

 また「17年間も逃亡し反省を深める様子もなく、更生に向かう兆しが見られない。被告の刑事責任は有期懲役の範囲に収まるものでない」と断罪されても、被害者参加人の浅川一雄さん(55)の目には「淡々として人ごと、眠たそうな表情に見えた」と“心ここにあらず”に映った。

「オウム真理教家族の会」の永岡弘行会長(77)も「裁判長が判決文を読んでいる間、ずっと手で蓮華座を組んでいた。裁判長を哀れむようで相手をいらいらさせる態度でした。今、彼は常識の世界に生きていない。カウンセラーによって元の人間に戻してからでないと何を言っても通じない」と振り返った。

 地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(68)は「初めての裁判員裁判で、オウムの教義や信者の人間関係を裁判員がどう判断するのか不安もあった。求刑通りの判決にホッとしてる。証人の中には再審を考えている人もいて、利害関係があり、裁判の中で新しい事実は期待できないと感じた」と語った。

 永岡会長は「今日の公判に(後継団体の)幹部が来ていたが(彼らからすれば)“よく頑張った。集中修行ができてよかったじゃないか”という感覚だろう。まだ目が離せない」と警戒感をあらわにした。