遺体なき死体遺棄事件に注目が集まっている。東京都足立区で2年前から行方不明になっている当時3歳の男児を虐待して死亡させたとして、警視庁捜査1課は28日、父親の皆川忍容疑者(31)と妻の朋美容疑者(28)を監禁致死と死体遺棄容疑で逮捕した。2人は2012年12月から13年3月3日ごろまで、次男の玲空斗(りくと)ちゃんをウサギ用の小型ケージに監禁し、顔にタオルを巻いて窒息死させ、遺体を同区の荒川に捨てた疑いが持たれている。食事は2~3日に一度しか与えず、入浴も満足にさせなかったという。調べに対して夫婦は「言うことを聞かないので閉じ込めた。騒ぐので口にタオルを巻いた」と供述している。

 しかし肝心の遺体は、まだ見つかっていない。皆川容疑者は「山梨県の河口湖周辺に捨てた」としているが、朋美容疑者は「夫と荒川に行き、川の中に捨てた」と、一部で食い違いも見られる。それでも、当局は立件可能と判断。昨年7月に荒川の川底からスコップ、同11月にウサギ用のケージが発見され、防犯カメラの映像からも実際に2人が荒川周辺に向かった形跡があったためだ。

 日大名誉教授(刑法)の板倉宏氏は「遺体なき死体遺棄容疑の適用は異例ですが、自供とそれを証明する物的証拠が出ているので、立件は可能です。10年以上の実刑は確実でしょう」とコメント。続けて「以前に比べ、状況証拠がクロなら立件可能という傾向になっています」と解説する。昨年には関西圏で連続不審死事件が発覚し、筧千佐子被告(68)が逮捕された。“後妻業殺人”とも呼ばれる事件で、筧被告に夫や内縁関係の男性を次々と毒殺した疑いが浮上。現時点で2件の殺人罪で起訴されているが、取り調べで同被告は別の複数男性の殺害にも関与したことをほのめかしている。

 板倉氏は「本人の自供だけでは厳しいが、殺害を証明する物証が一つでも出てくれば、立件はできると思う」と推察するが、果たして――。