千葉県船橋市の野口愛永さん(18)が監禁され、同県芝山町の畑から遺体で見つかった事件は、凄惨な生き埋めだった可能性も浮上した。監禁容疑で逮捕された同年代の若者4人に車で連れ去られ、暴行を受けた末に命を落とした野口さん。残虐な犯行はいかなる心理のもとでなされたのか。

 捜査関係者によると、野口さんの口の中には何かが詰められ、口の周辺をふさぐように粘着テープが巻かれていた。両腕は結束バンドで縛られており、逮捕された4人のうち、無職中野翔太容疑者(20)と無職井出裕輝容疑者(20)が、事件前に県内のホームセンターで、結束バンドを購入していたことが27日、捜査関係者への取材で分かった。県警は計画的に犯行に及んだとみて調べている。

 捜査関係者によると、店の販売履歴などから結束バンドの購入を確認。4人は千葉市内から野口さんを連れ去り、芝山町へ向かう車内で、バンドを使用していたとみられる。野口さんは高校の同級生だったアルバイトの少女(18)と中野容疑者に後部座席で暴力をふるわれていたという。

「目や口内に窒息時に見られる内出血の痕はあったものの、体にあざや刺し傷など目立った外傷はなかった」と別の捜査関係者。遺体の状態や逮捕少年の供述から、野口さんは抵抗を封じられたうえで、絶命する前に埋められ窒息死した疑いもある。

 野口さんの命があった状態で土をかけたなら、生き埋めということになる。元警視庁刑事で犯罪学者の北芝健氏は「生き埋めは、暴力団がよくやっていたやり口で、その残忍性によって自分たちの力を対外的に誇示する狙いがある。それを模倣したのではないか」と指摘する。

 今回の事件は、4人が他の不良グループの存在も視野に入れ、「自分たちのグループがどれだけすごいかを見せつけたかった。それが集団での残虐な犯行になった」(北芝氏)可能性がある。仲間意識や集団自立性を示そうとする意識が表れているという。

 野口さんは昨年12月に家を出た後に消息が途絶え、両親が今月23日に警察に届け出ていた。空手に熱心だった野口さんは高校進学後に生活が派手になり、ホストクラブ通いなどが周囲の証言で浮かび上がった。そうした過程で不良グループとの接点が生じ、グループ間の勢力争いの犠牲となったのか。

 2006年6月、東大阪市の大学生ら2人が集団暴行された末に生き埋めにされた事件が起きている。女性との交際をめぐるトラブルで起きた暴力沙汰への報復が陰惨な行為へとエスカレートした。暴行に加わったのは9人。事件の背景としては不良グループや暴力団の存在も指摘された。野口さんが生き埋めにされたのなら、それは集団によって行われやすい犯行なのかもしれない。

 集団による生き埋めは普通の絞殺や刺殺、銃殺などに比べて「罪悪感が薄まる」(同)側面もあるようだ。最終的に命を奪う実感が薄い殺害方法だけに、今回の手口が選択されたと捉えることもできる。県警は27日に司法解剖を行い、詳しい死因や死亡までの経緯を調べる。