首相官邸の屋上で小型無人機「ドローン」が見つかった事件で警視庁は25日朝、福井県小浜市の山本泰雄容疑者(40)を威力業務妨害容疑で逮捕した。男は「反原発を訴えるため、官邸に飛ばした。(機体に付いていた)容器に福島の砂を入れた」と話している。


 事件は急速に普及するドローンによるテロ対策の甘さを露呈した。法改正でドローンの脅威は防げるのか。24日には、ドローンの“官邸襲来”を受け、関係府省庁連絡会議の初会合が開催され、ドローンの所有者の名前や住所などの登録義務付けや皇居、首相官邸、原発施設などの上空の飛行制限の設置などの対策を検討した。


 官邸で見つかったドローンを製造する大手の中国DJI社は既にプログラムを更新し、空港だけでなく、官邸や皇居上空を飛行禁止区域に設定。内蔵GPSで位置が捕捉されており、禁止区域には侵入できなくなる。


 だが、ドローンに詳しい事情通は「GPSはオンオフができるし、取り外しもできる。GPSがない場合、飛行バランスは悪くなるが、目視できる範囲は簡単に飛ばせる。安価なドローンはGPSがついていない。規制を厳しくしても、悪い使い方を考えられたら、どうしようもない。カッターナイフをどう使うかと同じ問題」と指摘する。


 警察などの頭が痛いのは「要人の移動時や屋外での街頭演説にどう対応するのか。ドローンが入って来ないよう、妨害レーダーを飛ばせば、他の機体や通信に支障をきたす恐れがある」(政府関係者)という点だ。


 襲来してきた場合の対応も決まっていない。


「4つあるプロペラはプラスチック製でもろく、少しでも欠ければバランスを失って、墜落する。ただ撃ち落とすワケにもいかないし、動いているドローンに当てるのは至難の業。エアガンのサブマシンガンのような連射式で撃つのが一番手っ取り早い。さすまたのようなもので突いてもいい」(前出の事情通)


 もっとも、ドローンに爆弾や細菌兵器を積まれている場合は容易に墜落させるワケにもいかない。悪用には、お手上げなのが現状だ。