京都府警などの合同捜査本部が、外為法違反の疑いで北朝鮮からマツタケ1200キロ(300万円相当)を不正輸入した都内の貿易会社社長ら男2人を逮捕し、関連先として在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬議長などの自宅を家宅捜索し、日朝間の駆け引きが展開されている。


 同議長は北朝鮮が「駐日北朝鮮大使」とする立場で、これまでは“アンタッチャブル”だった。許氏は北朝鮮の国会議員に当たる「代議員」の資格を持っており、総連側は「前代未聞の違法捜査だ」と息巻くが、日本側は「捜査は法に基づいて適正に行っている」(菅義偉官房長官)と強気だ。背景には、日本人拉致被害者の再調査が焦点となる来月上旬の日朝協議へ向けた狙いがあるという。


 政府関係者は「捜査本部は安倍内閣の暗黙の了解なくして、強制捜査に踏み切れる事案ではなかった。拉致被害者家族会は来月3日に安倍首相と面会し、北朝鮮から調査結果の回答がないことを受け、北朝鮮への制裁を再要請する方向です。安倍内閣としては、朝鮮総連を締め付けることが北朝鮮への効果的な圧力となり、家族会の理解も得られるという判断だったとみられます」と語る。


 今月初旬、韓国メディアは「北朝鮮が日本人拉致被害者に関する再調査を事実上終了した」と消息筋の話として伝えた。在任中に拉致問題の全面解決を目指している安倍晋三首相(60)としては、来月の日朝協議で北朝鮮が再調査の結果を一方的に正式発表し、終了宣言することを予測して、圧力をかけた格好だ。


 平壌情勢に詳しい関係者は「都内の朝鮮総連本部は継続して使えるようになりましたが、今回の事件で逮捕者が出て、トップが強制捜査されたことで総連内には衝撃が走っています。今後は総連本部が家宅捜索されるかもしれないと警戒しています」と話す。


 捜査本部は、総連の事件への関与、不透明な資金の流れはもちろん、総連本部が継続使用できるようになった経緯についても解明する方針。日本が優位に立つか注目だ。