目黒公証役場事務長仮谷清志さん(68=当時)拉致事件で逮捕監禁罪などに問われたオウム真理教元幹部平田信被告(49)の控訴審で、東京高裁(八木正一裁判長)は4日、裁判員裁判で懲役9年とした一審判決を支持し、控訴を棄却した。

 弁護側は同様の犯行に関与した元信者と比較して、量刑が重過ぎるとしたが、裁判長は「元信者の判決は15年も前に職業裁判官だけで確定したもの。刑事事件の量刑が重くなっている傾向もある。裁判員裁判も導入されて市民の視点も取り入れられた。刑を見直すことに限度はあるだろうが、不当ではない」とした。

 社会を震撼させる凶悪事件の裁判員裁判で下された刑が「重過ぎる」として高裁や最高裁でひっくり返される事例が相次ぎ、問題視されている。だが、今回は“市民感覚”を重視する判断だった。また、拉致の計画の共謀を認定した一審判決も支持された。

 宗教学者の元自宅マンション爆破事件で、被害者が出ていないことを勘案すれば「爆発物取締罰則違反罪」ではなく、より軽い「器物損壊罪」として扱うべきという弁護側の意見に対して「修理費用が83万4300円もした。十分に危険性が高い」と退けた。

 裁判に参加した仮谷さんの長男・実さん(55)に対して、平田被告は一審と同じように何度も頭を下げていた。判決後、会見した実さんは一審からの裁判を振り返り「新しい事実は出てこなかったが、有益だった。死刑囚の姿も見られて、証言の信ぴょう性に自分なりの判断ができた」と語った。

 現在、教団元信者高橋克也被告(56)の裁判員裁判が審理されている。今回の決定で、オウム裁判には裁判員の意向が十分反映することがわかった形。高橋被告の判決にどう影響するのか注目される。