「殺されるかもしれない」――。神奈川県川崎市の多摩川河川敷で遺体で発見された中学1年、上村遼太さん(13)が事件の1週間前に同級生に悲痛なメッセージを送っていた。昨年秋から高校生グループと行動を共にするようになった上村さんは、年明けから暴力を振るわれるようになっていた。行為はエスカレートし、同級生にLINEで「殺されるかも」と事件を予感させる言葉を漏らすまでに深刻化。暴力と脅しで上村さんをがんじがらめにしたグループの“悪魔のような正体”も徐々に分かってきた。

「助けてほしい」「限界」「殺されるかもしれない」。小学校時代の同級生にあてたLINEのメッセージは、危機感と悲壮感にあふれていた。

 小学校6年のときに島根県隠岐諸島の西ノ島から川崎へ転校してきた上村さんは、市内の中学校に進学して、希望していたバスケットボール部に入った。バスケ好きの少年として目立つ生徒だったが、昨年11~12月ごろから練習に顔を出さなくなったという。

 同じバスケ部の2年生は「具合が悪いとかじゃないのは知ってた。年上のグループとの付き合いで出てこなくなったって噂が流れてました」と話す。

 上村さんが付き合いのあったグループとは「金髪の不良みたいな高校生がいるグループでした。友達の紹介で無理やり入れられたそうです」(小学校時代の同級生)。初めは暴力などなく大師公園で遊んでいるところが見かけられた。

 ところが、このグループは“悪魔集団”とも呼べそうな非道な若者の集まりだったようだ。ただの遊び仲間の関係が変化したのは、年明けから。

「朝から晩まで殴る蹴るとか、自転車で突っ込まれたりとかされていると相談を受けていました。2月14日にはLINEで『やばい』『助けてほしい』とメッセージが来たんです。『殺されるかもしれない』と。そのときは殺されるとは思ってなかったから『そういうことにはならないよ』と(返事をした)」(前出の同級生)

 暴力のきっかけは万引きの指示だった。高校生グループの中で上村さんは一番年下だった。

「いい使いっ走りみたいになっていた。(高校生たちは)仲良くなってから遠慮がなくなったみたいで、上村は万引きとか犯罪に誘われていました。“コンビニで万引きしろ”って言われて反抗したら、暴力が始まったと言っていました」(同)

 上村さんは年明けから学校に通っていない。この同級生にはLINEで「家を知られているので帰れない」とも伝えるほど追い詰められていた。また、この同級生によると1月初めに上村さんと会った際に、「グループを抜けたい。学校にも行きたいしバスケもしたい」と打ち明けられたという。

 しかし、上村さんはグループを抜けることができなかった。事件の3、4日前に上村さんを見た友人は「すごく顔がはれていた」と振り返る。

 遊び仲間と思っていた高校生たちが実はほとんど犯罪集団…。抜けようとしても「家族を傷つけるぞ」とでも脅されたのだろう。この悪魔集団としか思えないグループの正体は?

 上村さんが通う学校とは別の中学の卒業生が中心で、上村さんと同じ中学の3年もいたという。メンバーは8人ほど。短い金髪の少年が一番目立っていた。

 遺体発見現場の河川敷にはたくさんの花束とメッセージの書かれたバスケットボールなどが供えられていた。上村さんが好かれていた証拠だ。

 現場近くで釣りをするという年配の男性は「夜は真っ暗。土地勘のある人間じゃないと分からない。(発見現場は)土手で死角になっているから見えにくいんだ」と話した。