【八王子スーパー射殺事件】指紋酷似男の正体

2015年02月20日 07時30分

ナンペイ大和田店(1995年7月)

“指紋の男”の正体はいったい――。1995年に東京・八王子市のスーパー「ナンペイ大和田店」で女子高生2人を含む女性従業員3人が射殺された未解決事件が、20年の時を経て再び動きだした。被害女性を縛っていた粘着テープから検出された指紋が、10年ほど前に病死した多摩地区居住の日本人男性Xのものと酷似しているというのだ。同事件をめぐっては、金目当ての中国人マフィアによる犯行も有力視されたが、専門家は「銃の扱いを訓練された者」と分析する。

“ナンペイ事件”は1995年7月30日夜に起こった。八王子市にあったスーパー「ナンペイ大和田店」の2階事務所で、パート従業員の稲垣則子さん(47=当時)とアルバイトの女子高生・矢吹恵さん(17=同)、前田寛美さん(16=同)が至近距離から拳銃で頭や顔を撃ち抜かれ死亡した状態で発見された。

 犯人は現金約500万円が入った事務所内の金庫をこじ開けようとしたが、何もとらずに逃亡。現場には銃弾、犯人のものとみられる1種類の足跡、女子高生2人を縛っていた粘着テープが残されていたものの、容疑者特定には至っていない。

 時間の経過とともに、事件は様々な臆測も呼んだ。ヤクザや中国人マフィアなどのカネ目当て説、男女の痴情のもつれによる怨恨説などなど…。13年11月には実行犯を知っている可能性があるという理由でカナダ在住の中国籍の男を“別件逮捕”し、日本に移送。取り調べを行ったが、有力な手掛かりは得られなかった。

 そんななか、この日までに粘着テープから採取した指紋の一部が、10年ほど前に病死したXのものとほぼ一致したことが判明。事件は再び大きく動きだした。

 指紋照合は12点が一致した場合「同一」とみなされるが、今回は特徴点と呼ばれる細い線の切れ目や分岐点計8点のみが一致。採取された指紋が完全な形で残っていなかったからだ。そのため前歴者などを含む1000万人以上の指紋データベースで照合しても「該当なし」だったが、当局はその8点に注目し捜査を続けた結果、Xの存在を突き止めたという。

 当局によると、事件当時Xは50代で多摩地区居住。

 10年ほど前に60代で病死した。八王子に土地勘のある人物だったという情報もある。ただし、3人との接点がなかったため、捜査線上に浮かぶことのない人物だったようだ。

 そこで思い出されるのが事件直後の目撃談だ。当時を知る人物の証言。

「事件当日の夕方ごろ、店内の様子をしきりにうかがう男性がいたそうです。年齢は50代くらいで日本人。店に入るわけでもなく、レジを担当していた稲垣さんと矢吹さんのことをずっと見ていたそうです」

 不審者は稲垣さんが出勤した午後5時ごろからうろついていたという。

 現場に足を運んで事件を調べた経験もある元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏はこう語る。

「その目撃談は私も聞いている。こういう未解決事件が起きると、中国マフィアなどを絡めて壮大なストーリーに仕立てあげようとしてしまうが、案外身近な人間が犯人であることが多い」

 さらに北芝氏は、稲垣さんだけが顔面に殴打された跡があったことに注目。

「金庫の暗証番号を教えろと強要された際に殴られたか、Xと個人的なトラブルを抱えていて殴られたか。遺体の損傷から見ても犯人の憎悪が感じられる」

 北芝氏はXの人物像について「人間の頭部に拳銃を撃ち込むということは、少なくとも“素人”ではない。銃の扱いに関して訓練を受けたことがある者だろう」と指摘する。

 かといって、闇社会の人間とは必ずしも言い切れない。

「ちゅうちょなく頭部を撃っていることから、ヤバイやつと思われるかもしれないが、人間は銃の訓練を受けると、その瞬間から『どううまく的に当てようか』と考えるようになる。拳銃の冷たい質感でセンチメンタルな感情はブッ飛ぶんです」

 真相解明が待たれる。