【イスラム国・日本人人質事件】日本を恐怖のどん底に突き落としたイスラム過激派「イスラム国」が勢力を拡大させるかもしれない。昨今の原油安で原油密売による収入が下がったり、空爆により死者が出たりとイスラム国が揺らいでいるとも言われているが、安心はできない。

 イスラム国は2014年6月に国家樹立を宣言。それまでに破竹の勢いで支配地域を拡大し、さらに、インターネットを使った巧妙な宣伝により、賛同者を増やしてきた。向かうところ敵なしだったが、1月下旬にはトルコ国境付近のコバニにおいて、クルド人部隊に撃退されたと伝えられていた。

 原油安や空爆によりイスラム国にかげりがみえたということなのか。ことはそう簡単ではないという。

「イスラム国にはたくさんの外国人が参加しています。彼らは思想で結束しています」と中東に詳しいジャーナリストは指摘する。日本の公安関係者は「イスラム国はカリフ制の国家と自称しています。カリフとはイスラム世界においての指導者という意味です。イスラム国の主張するカリフ制に賛同する人間が集まっているとみられます」と話す。

 利害ではなく思想で結束しているのが問題だという。「例えばですが、タイにもイスラム系の武装集団があります。今は私利私欲で争いをしていますが、イスラム国と主義主張でつながって連携すると厄介です。私利私欲なら満足すれば終わりですが、主義主張となるとそうもいかない。この武装集団はアルカイダとのつながりを指摘されたこともありました」(前出ジャーナリスト)

 今は別々にある世界各地の過激派組織とイスラム国が思想でつながり、各地でテロ行為をしかねないというのだ。

 前出の公安関係者は「イスラム国にただ賛同しているのも要注意ですが、社会に対する不満のはけ口をイスラム国に求める人が出てくることも予想されます」と話す。北大生のイスラム国渡航未遂事件でも、北大生は警察の調べに対して、「就職活動がうまくいかなかった」と話していたという。

 思想のつながりと社会不満をイスラム国が利用するのだろうか。