信仰心薄い元自衛官を暗殺に走らせたオウムのカネと待遇

2015年01月29日 07時00分

 死刑囚を含む元教団関係者らが連日証人出廷しているオウム真理教元信者・高橋克也被告(56)の裁判に“ユニーク”な元信者が現れた。27日に東京地裁で開かれた同被告の裁判員裁判の第8回公判で、教団との独特の関わり方を語った山形明受刑者(49)だ。

 猛毒VXを使った3件の殺人・同未遂事件で、被害者にその溶液をかける実行犯だった山形受刑者。18歳で自衛隊に入り、千葉・習志野の精鋭部隊「第1空挺団」所属の経歴を持つ。丸刈り頭で法廷に現れ「懲役20年で服役中です!」と法廷で元気よく発声した。

 1997年に下された判決が確定している。多くの元信者が非合法活動に関与したが、山形受刑者が大きく異なるのは教団への信仰心の薄さだ。「ヨガや潜在能力開発に興味があった。超能力が身につけば面白い。その程度」の考えで出家した。

 共同生活から脱走もした。連れ戻された後、松本智津夫死刑囚(59=教祖名麻原彰晃)との個人面接で「軍事やセキュリティーの仕事をしたい」と愚痴をこぼしたところ、「金を出してやる」と、よもやの返答をもらう。「正直、オウムに興味なかったけど、打算的な気持ち」で残留を決めた。

 月50万円の資金提供を受け、好きなときに米国やロシアで軍事訓練を受けたほか、教団の“軍事教官”として山にキャンプを張って、信者に指導する立場も得た。

 オウムでは「上の命令には絶対服従」という教義に縛られ、犯罪に巻き込まれた信者ばかりだが、山形受刑者は違った。教団は金や待遇を与えることで、犯罪を断れない状況をつくりだすこともやってのけたわけだ。

 山形受刑者に謝罪の念は強く、被害者の名前に必ず「様」をつける。犯行に対する葛藤はあったが、「乗りたくない電車に乗って、ドアが閉まって途中下車できずに突っ走る」状況で次々と暗殺に手を染めていった心境を述べた。

 高橋被告はVX事件や地下鉄サリン事件など5事件で起訴され、全ての起訴内容について争っている。弁護側は同被告がVXの危険性を認識していなかったと主張しているが、認識していた可能性が過去の証人から指摘されている。山形受刑者も同被告から「用心のため解毒剤を打ったほうがいい」と勧められたことを明かし、危険性を知っていたことを示唆した。

 山形受刑者の証言は松本死刑囚の暗殺対象にも及び、2つの新興宗教の教祖2人と、教団と対立する立場のジャーナリスト江川紹子氏も含まれていたという。最後は高橋被告に頭を下げながら退廷。同被告もそれに応じて頭を下げた。