「ついにやった。」――。 名古屋市昭和区のアパート室内で無職の森外茂子さん(77)の遺体が見つかった事件で、愛知県警は27日、女性をおので殴るなどして殺害したとして殺人の疑いで、この部屋に住む名古屋大の女子学生(19)を逮捕した。調べに「人を殺してみたかった」「宗教の勧誘が煩わしかった」と容疑を認めている。女子学生は森さんの行方不明当日、自身のツイッターに犯行を指したものとみられる冒頭の書き込みをしていた。

 逮捕容疑は昨年12月7日昼ごろ、自室で森さんの頭をおので殴るなどして殺害した疑い。殺害後に宮城県の実家に帰省していたが、森さんとの接点を捜査していた千種警察署が連絡し、名古屋に戻った女子学生から事情を聴いていた。

 森さんは女子学生のアパートの風呂場で発見され、凶器のおのも部屋から見つかった。「おのは以前から所有していた」と供述していたことも28日、捜査関係者への取材で判明。県警は殺人願望を抱いていた女子学生があらかじめ凶器を準備し、機会をうかがっていたとみて調べる。
 女子学生は、以前からツイッター上で犯罪の予兆を見せていた。「逮捕される夢みた。怖かった。」(昨年4月19日)、「『殺したい』人はいないけど『殺してみたい』人は沢山いる。」(5月12日)、「日常を失わずに殺人を楽しめることが理想なんだと思う。」(9月13日)、「夢の中で○○(女子学生の姓)は人殺しでした。」(11月23日)

 事件直前の12月5日には「名大出身死刑囚ってまだいないんだよな」とツイート。神戸連続児童殺傷事件の「酒鬼薔薇聖斗」や佐世保小6女児同級生殺害事件の少年加害者、秋葉原通り魔殺人の加藤智大被告、オウム真理教の麻原彰晃死刑囚ら凶悪犯などへの崇拝をうかがわせる書き込みも多数ある。名古屋大は旧帝大の名門で、昨年の天野浩教授らノーベル賞受賞者も多数輩出している。

 元警視庁刑事で犯罪ジャーナリストの北芝健氏はこう分析する。

「崇拝する殺人鬼に並びたいという目標達成と性的興奮をもたらした快楽殺人です。殺人動機は佐世保の女子高生殺害事件のようで、犯罪の予兆を見せてネット上で注目を集めようとした点では加藤智大に近い。知能は高いが、共感性のないサイコパス(精神病質)の可能性が高く精神鑑定が必要でしょう」

 北芝氏は、女子学生がおのを準備していたことに注目する。

「ツイッターには『よく性別を間違われる』と書いているが、嫌がる様子はなく、むしろ男性性の強いことを誇らしく思っており、男性ホルモンが異常に強い攻撃型タイプだろう」

 名大の学生は「(女子学生が)応援団に入っていたと聞いて、応援団はほとんど部員がいないはずなのに、なんで女の子がわざわざ入ったのだろうと不思議に思った」と話す。

 森さんが行方不明になった昨年12月7日、2人は一緒に宗教施設を訪れてから女子学生の部屋に移動している。

「勧誘がしつこく憎悪が日に日に濃くなってきたことや、密室であり老女ならば抵抗されずに殺せるなどの条件が整い、殺害に至ったのでしょう。女性がおので殺害しようと思っても余程の筋力と集中力、条件が整わなければできない」(同)

 奇妙なのは森さんを殺害しても遺体を処理しようとせず、1か月以上も放置していたこと。

「“殺してみたい”衝動のある人間にとって死体はあこがれ。自分の部屋にあってもインテリアのような感覚で日常の光景になってしまうため、処理しようという発想には至らない」

“短絡的”や“キレやすい”だけでは説明のつかない不可解な犯行のようだ。