【イスラム国・拘束事件】後藤さん 「渡航前から罠」の新証言

2015年01月29日 08時00分

 イスラム過激派「イスラム国」に拘束されている後藤健二さん(47)とみられる男性の新たな画像が27日、インターネット上で公開された。「私には24時間しか残されていない」との「最後のメッセージ」付きで、ヨルダンが拘束するイラク人女性死刑囚との“交換”に期限を設けて要求した。殺害された可能性が高い湯川遥菜さん(42)を救出するためシリア入りした後藤さんには、出発前からテロ集団に狙われていた可能性が出てきた。すべては綿密に計画されたイスラム国の“罠”だったというのだ――。

「湯川さんを助けに行く」
 そう宣言して、後藤さんは昨年10月、シリアのイスラム国支配地域に入った。その後どうなったかは言うまでもない。日本では湯川さん同様、拘束された後藤さんに対し「自己責任だ」という厳しい声も飛んでいる。

 一方で、後藤さんはこれまで数々の戦地に足を運んできた戦場取材のプロ。現時点で世界一危険と言っても過言ではないシリアに、湯川さんを助けたい一心で入国したとしても、無計画に凶暴なイスラム国と対峙するはずがない。

 後藤さんと親交があるマスコミ関係者は「戦地取材は人命第一。そのことは後藤さんがよく分かっている。入念に事前準備する人だし、(湯川さん解放に)勝算がなければシリアには絶対行かないと思う」と話す。

 後藤さんの渡航スケジュールは非常にタイトだった。10月22日に日本を発ち、23日に隣国のトルコに到着。24日に国境を越えシリアに入り、25日にイスラム国の支配地域にある“首都”ラッカを目指す計画だった。

 帰国予定は10月29日。わずか1週間の滞在期間で、イスラム国地域での活動は3日程度だ。前出の関係者は「戦場ジャーナリストは最低でもひと月は現地に行く。このスケジュールは明らかにおかしい」と話す。

 謎の過密スケジュールから見えてくるのは、日本にいる段階で後藤さんがイスラム国と何らかの申し合わせを行った可能性だ。

「事前にイスラム国から『湯川さん解放の用意がある』と伝えられ、後藤さんはその言葉を信じ、シリアに向かったのではないか。一部では日本のテレビ局から極秘の依頼を受け、現地入りしたという話もある。出国直前の彼は緊迫感より、いつになく興奮した状態。人質救出という“大仕事”に胸を高鳴らせていたのかもしれない」とは外交関係者。

 当初、イスラム国は湯川さんを身代金のネタにしないし、処刑もしないとして、公開裁判を行う構えを見せた。その立会人として、イスラム学者の中田考氏(54)やイスラム国とパイプのあるジャーナリストの常岡浩介氏(45)に接触を図るなど、現在の一触即発な状況とは異なる。

 しかし、それらすべてがイスラム国の罠だったとしたら…。身代金要求が発覚した直後の一部報道では、後藤さんがトルコ在住の知人に「シリアに同行したガイドに裏切られ、武装グループに拘束された」と電話で説明したとされるが、その“裏切り”も計画の一部だったとしたら…。

 青森中央学院大で国際テロ研究を行う大泉光一教授は「イスラム国の要求は身代金から死刑囚の釈放に移り、その人数も増えてきている。あらゆることを想定し『こっちの要求がダメだったら、こっち』というように、入念に準備されているように思う」とコメント。

 これまでヨルダンはイスラム国には譲歩しなかった。ところが、多額のODA(政府開発援助)を投じている日本はヨルダンに影響力がある。今回、イスラム国は日本人を拘束することで、日本を通して間接的にヨルダンに圧力をかけてきた。

 さらに、後藤さんとヨルダンに拘束されている女性死刑囚の1対1の交換を要求。要求に応じないと、イスラム国が拘束しているヨルダンのパイロットを殺害するとしている。もし、交換要求が通ったとしても、パイロットがイスラム国に拘束されたままとなれば、ヨルダン国民はヨルダン政府に猛烈な抗議活動を行うだろう。イスラム国は巧妙な交渉をするため、複数の日本人を必要としたのだろうか。現在、後藤さんは米国や日本、ヨルダンなど反イスラム国連合をけん制する“道具”として政治利用されている。後藤さんを拘束した時点で、すでにこのシナリオが描かれていたのかもしれない。