イスラム過激派「イスラム国」が湯川遥菜さん(42)とフリージャーナリストの後藤健二さん(47)の殺害予告をしていた件で、期限の72時間が過ぎたが、何のメッセージもないまま24日朝を迎えた。


 23日、後藤さんの母親である石堂順子さん(78)が会見し「健二はイスラム国の敵ではありません」と解放を訴えた。明確な交渉のチャンネルすら不明のままだが、青森中央学院大学の大泉光一教授(国際テロ研究)は一縷(いちる)の望みをこう話す。


「結局、米国からは“テロを助長するから身代金は払うな”と言われ、イスラム国側は“2億ドルと言ったら2億ドル”という態度を崩さない。日本国内では自己責任論が吹き荒れ、日本政府は完全に板挟み状態。身代金の支払いをおおっぴらにはできませんが、水面下では交渉を継続しているはず。2~3日中には結末が見えるだろう」


 水面下で身代金を支払うとなれば「身代金をいろんな国から借金してかき集めるのは大変。一部は医薬品や車、食料などの物資の形で支払われることになるのでは」(同)ともみている。


 殺害予告の引き金となった安倍首相の中東訪問と2億ドルの支援表明についても「安倍首相はカモがネギしょってやって来たようなもの。湯川遥菜さんの拘束が判明した昨年夏以降も、すぐに動きはなかったが、米国の空爆で石油施設などが壊滅し、資金繰りに行き詰まったイスラム国にとって日本人は金になる重要な人質。2億ドルの中東支援表明がイスラム国に大義名分を与えてしまった」と大泉教授。


 今回の事件を機に、世界中に住む日本人が標的になる危険性についても「世界中にイスラム国の支持者が散らばっており、これまで以上に日本人が誘拐の標的になるでしょう。日本国内にイスラム国グループが流入してテロを起こさないとも限らない。今回も邦人の拘束は分かっていたことなのだから、周辺の大使館がきちんと情報収集していれば、安倍首相に中東訪問を控えるよう助言できたはず。日本は特に中東に関して情報音痴。中東政策も見直さなければならないでしょう」と指摘した。